研究課題
各種の神経自己抗体の存在が報告され、精神疾患の病態に自己抗体の関与が示唆される。統合失調症、気分障害、てんかん、広汎性発達障害患者などの患者約260例の髄液、血清で、cell based assay法で抗体検査を行い、統合失調症、気分障害、てんかんが当初疑われた患者10数例で抗体陽性となった。患者は、精神疾患として向精神薬にて当初加療されたが無効で、経過中に脳波異常、髄液の軽度細胞、蛋白上昇、構音障害を認め、抗体陽性にて、抗NMDA受容体抗体脳炎と診断変更され、免疫療法(ステロイドパルス療法、血漿交換療法、免疫グロブリン大量療法、リツキシマブによる抗腫瘍療法)にて、完全又は部分寛解を認めた。気分障害と当初診断された62名の患者で、抗体陽性4例と陰性58例の臨床的な特徴を比較したところ、視覚異常、聴覚過敏などの視覚異常や、脳波での徐波、カタトニア、構音障害などが鑑別の指標となる可能性が示唆された。EUROIMMUN社のIIFT Autoimmune Encephalitis Mosaic6を用いた6種類の検査(NMDAR、GABABR、CASPAR2、LGI-1、GABAB、DPPX抗体)で、てんかん患者11名のうちNMDA受容体抗体陽性2名、VGKC複合体抗体(LGI-1抗体)陽性2名であり、高頻度で自己抗体の存在が確認された。4例は抗てんかん薬の効果が不十分な難治性てんかん患者であり、3名(1名は未治療)は免疫療法によりてんかん症状も含め完全または部分寛解した。基礎的検討では、ラット大脳皮質プライマリーカルチャーニューロンを患者の抗NMDA受容体抗体で処置し、神経突起伸長、中心体消失遅延(神経遊走障害)、樹状突起形成が障害され、抗体除去しても不可逆であった。精神疾患や妊娠期の胎児など、抗体に長期神経細胞が暴露される場合は神経発達に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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