iPS細胞由来ニューロンと、末梢血由来マクロファージとの共培養系を用いて実験を行っている。山中教授の研究室で作成され、頒布されいるiPS細胞株と、我々の研究室で作成したiPS細胞株の、健常者2名由来のiPS細胞株を用いて、興奮性・抑制性ニューロンを分化誘導した。いずれの細胞株でも興奮性・抑制性のニューロンが、90%以上の純度で誘導可能であった。両者の混在による培養も可能であるが、系を単純化するためまずは興奮性ニューロンのみの培養系に絞って解析を進めている。 iPS細胞由来ニューロンの培養4週目の時点で、健常対照者・自閉スペクトラム症者の末梢血由来のマクロファージとの共培養を開始し、培養8週目で解析した。マクロファージは炎症惹起型のM1型と組織修復型のM2型とにわけて培養しているが、炎症惹起型のM1型と共培養すると、ニューロンのMAP2陽性の樹状突起が退縮する現象が両群で観察された。各群5名づつまで研究参加者を増やし、検体を得て解析を行い、退縮の程度には群間で差が認められた。この現象に働く要因について現在検討中である。組織修復型のM2型では退縮は認められないが、伸長が促進されるわけでもなかった。組織修復型のM2型との共培養では、ニューロンのみの培養と比較して、シナプス形成が促進される傾向がみてとれた。この現象については、群間での差異は認められなかった。関与する可能性のある栄養因子について、群間での発現に差が無いかも検討中である。
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