研究課題
R1年度は成人でのFCおよびDTIの方法論の確立に努めた。その成果の一部は論文、学会などで報告された。すなわち、rs-fMRIにおいて 、補足運動野(supplementary motor area: SMA)を中心としたネットワークと視覚野内のネットワークにおいて群間差が顕著であった。患者群はSMAから中心前回・中心後回・左尾状核・右下側頭回へのFCが亢進していた一方で、SMAから被殻へのFCは低下していた。視覚ネットワークにおいては、両側紡錘状回間および右紡錘状回ー右外側後頭皮質下部のFCは低下していた。脳波において患者群は健常群と比べて、右insulaのoscillationが亢進している傾向を認めた。FCにおいては、SMAネットワークおよび視覚ネットワークでFCが有意に減弱していた。【考察】患者群において、SMAを起点としたFCの有意な亢進または減弱は、皮質-基底核ネットワークの機能不全をSMAを含む皮質内ネットワークが代償していることを示唆する所見とも考えられた。健常者においてはglobalなネットワーク間の機能分離や機能連携は思春期ー成人期において完成する。統合失調症患者においてネットワーク間の連絡・分離不全が報告されている。分離が不全であれば、ネットワーク間の連絡のみならず相互抑制機構も機能しなくなる。ネットワーク間分離不全仮説は、発達段階における神経回路網の形成不全を統合失調症の主たる病態とする神経発達障害仮説を支持する。本研究において、患者群がSMAネットワークと視覚ネットワークにおいてFCの有意な亢進または減弱を示したことは、ネットワーク間の相互制御に偏倚があることを示唆し、ネットワーク間分離不全仮説を支持するものである。
2: おおむね順調に進展している
R1年度は成人でのFCおよびDTIの方法論の確立に努めた。その成果の一部は論文、学会などで報告された。予備的検討においては、患者群において、補足運動野(supplementary motor area: SMA)を起点としたconnectivityの有意な亢進または減弱(SMA-被殻:減衰, SMA-皮質内:亢進)は、皮質-基底核ネットワークの機能不全をSMAを含む皮質内ネットワークが代償していることを示唆する所見とも考えられた。患者群がSMAネットワークと視覚ネットワークにおいてconnectivityの有意な亢進または減弱を示したことは、ネットワーク間の相互制御に偏倚があることを示唆し、ネットワーク間分離不全仮説を支持するものである。従来、SMAに着目した報告は少なく、さらに検討を重ねる価値のある所見と考える。
今後、統合失調症患者に加えて、ARMS患者におけるFCをresting-state functional MRI (rs-fMRI)を用いて検討する。またfMRIに拡散テンソル画像(Diffusion tensor imaging: DTI)を組み合わせることによって、fMRIで得られたネットワークモデルにDTIによる解剖学的な証左を付加することを目的とする。converterとnon-converterでは脳の機能的または形態学的に差を明らかにすることで、予後予測に援用し、薬物療法および非薬物療法を含めた適切な早期介入が可能となる。現在ARMS症例についてデータ収集中であるが、未だ十分なサンプル数に達してないため、R2年度も継続してデータ収集にあたりたい。さらにDKI・NODDIとrs-fMRI・脳波所見と統合した包括的なARMSのFC異常の病態モデル確立を試みる予定である。
その他の経費において文具・通信費などで使いきれなかった額が残った。次年度も雑費として文具・通信費として使用する予定である。
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