研究課題
タウ蛋白の脳内集積で特徴づけられるタウオパチーにより認知症の異常行動が出現することは多く、認知症前駆期や認知症の精神病症状に関する研究からも、タウ蛋白による神経障害が幻覚・妄想や異常行動の出現に関与する可能性が指摘されている。このようなタウオパチーは、ポジトロン断層撮像法(PET)を用いたタウイメージングによって評価が可能であるが、認知機能に関わる神経回路の障害については、機能的MRIなどの認知機能関連脳部位を用いて評価が必要である。近年、機能的MRIを用いて安静時に自己の内省をしている際の脳内ネットワーク(デフォルトモード・ネットワーク)の障害が認知症の記銘力障害だけでなく認知症の異常行動にも関連していることが報告されている。しかし、タウイメージングと機能的MRIによる認知機能関連画像の双方を重ね合わせ、タウ病理回路とDMNの関連部位を評価した報告はない。本研究では、ポジトロン断層撮像法(PET)特に、タウイメージングと安静時・機能的核磁気共鳴画像(rsfMRI)を行い、タウ病理回路と意識や注意、視聴覚、言語・情動認識などの機能的認知ネットワークとの関連を検証することで、認知症の異常行動のメカニズムを明らかにすることを目標とした。本年度は、タウイメージングのデータ収集とタウイメージングの解析、安静時機能的MRIの画像解析を並行して行った。今後は、これらの結果を融合させ、個々の認知症患者の問題行動の神経基盤を明らかにしたいと考えている。
3: やや遅れている
本年度は、個々のタウイメージングのデータから脳内集積のあるものについて、個々の集積分布の検証を行うことができた。安静時機能的MRIの解析方法を行い、健常人の機能的MRIと個々の認知症の機能的MRIのデータの比較中であるが、解析の前処理の段階で時間がかかり、分析に時間を要しており、進捗はやや遅れているものと考えている。
個別のタウイメージングの解析結果からタウ蓄積の脳領域を特定する。そのうえで、関心領域の機能的結合がどのように変化するかを機能的MRIの健常者群と個々の認知症症例の画像データを比較することで検証する。可能なデータについては、死後脳の病理データとの比較によりタウ病理の検証を行う。これらを統合的に解析することによって分子イメージングと認知機能イメージング双方の視点から認知症の行動異常に関する脳病態を理解していきたいと考えている。
安静時機能的MRIの撮像や解析が順調に進まず、研究が次年度に持ち越しとなった。本年度は、分子イメージングと機能的MRIの融合解析を中心に必要な物品の購入などに研究費を使用したいと考えている。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件)
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