研究実績の概要 |
幼少期における社会的孤立(Social Isolation, SI)など生活環境の問題は、うつ病をはじめとする気分障害や統合失調症の発症と関連することが報告されている。幼若期の実験動物を用いた我々のこれまでの研究において、SIを3週間負荷するとうつ様行動を呈するのに対し、負荷期間を8週間に延長するとうつ様行動はさらに増悪するのではなく、かえって減弱して躁様状態とも考えられる行動を示した。一方、近年の動物実験において、更に長期間の社会的孤立が統合失調症様の行動を誘導することも報告されている。これらのことを鑑みると、SIの負荷期間が長期に及ぶにつれて、うつ様状態から躁様状態を経て統合失調症様状態へと移行していくのかもしれない。そこで我々は、幼若期の実験動物に対してSIを持続的に負荷した際の、気分障害に関連した行動や統合失調症に関連した行動を評価することを目的に実験を行った。 3週齢(離乳直後)のラットを搬入し、グループ飼育(通常飼育、コントロール群)または個別飼育(SI群)を開始した。飼育開始3週間後、8週間後および12週間後に、オープンフィールド試験(不安関連行動を評価。装置中央部への滞在率を不安様行動の指標とする)に引き続いてY字迷路試験(作業記憶(短期記憶)を評価。3回連続で違うアームに入った割合を作業記憶の指標とする)を実施した。 オープンフィールド試験においては、コントロール群では飼育期間が長期化しても不安関連行動に変化は認められなかったが、SI群では飼育期間が長期化するにつれて不安関連行動が増す傾向を示し、SI開始3週間と比べてSI開始12週間後では有意に増加していた。一方Y字迷路試験においては、コントロール群においてもSI群においても、飼育期間が長期化しても短期記憶に有意な変化は認められなかった。
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