研究課題
児への愛着の指標としてMother-to-Infant Bonding Scale (MIBS)を使用しているが、産後1ヶ月の産婦1755例のMIBSデータを使用して探索的および確認的因子分析を行い、“lack of affection”(LA)と“anger/rejection”(AR)の2因子構造をとることを突き止めた。さらに、妊娠初期(n = 1120)と妊娠後期(n = 1915)の妊婦のMIBSデータを使用して確認的因子分析を行い、その2因子構造が妊娠中のデータでも比較的よく保たれることを確認した。さらに、産後1ヶ月の産婦2379例のMIBSと不安と抑うつの指標であるHospital Anxiety and Depression Scale (HADS)との関係性を初産婦と経産婦で分けて検討を行った。まず、HADSの抑うつの得点は、初産婦(6.56 ± 3.43)の方が経産婦(5.98 ± 3.20)よりも有意に高かった(p < 0.001)。HADSの不安の得点も、初産婦(6.55 ± 4.06)の方が経産婦(4.63 ± 3.41)よりも有意に高かった(p < 0.001)。MIBSの得点も、初産婦(2.89 ± 2.68)の方が経産婦(1.60 ± 2.11)よりも有意に高かった(p < 0.001)。続いて、MIBSのパラメーター(合計得点、LA得点、AR得点)を従属変数、HADSのパラメーター(抑うつ得点、不安得点)を独立変数として重回帰分析を行ったところ、抑うつと不安がMIBSの各パラメーターに有意な影響を与えていた。特に初産婦において抑うつがLA(標準化係数 = 0.350, P < 0.001)とAR (標準化係数 = 0.357, P < 0.001)に強い影響を与えることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
新潟県全域の産科医、助産師の協力を得て、周産期の母親の不安や抑うつや児への愛着、およびそれらに影響を与える得る精神医学的・産科学的因子に関するデータの収集が順調に進んでいる。
今後もデータ収集を進めて、妊産婦が親から受けた養育体験やパートナーとの関係性、妊産婦の発達特性などの精神医学的因子、さらには、妊娠方法、出産方法、妊娠分娩歴などの産科学的因子が、どのように妊産婦の抑うつや不安、児への愛着に影響を及ぼしているかを包括的に解析していく。
データ解析用のPCやソフト、データ保管用のロッカーなどの購入が予定より遅れている部分があるが、2020年度に順次購入を進める予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)
Psychiatry and Clinical Neurosciences
巻: 73 ページ: 661~662
10.1111/pcn.12920