産後女性における発達特性、不安・抑うつおよび母から児へのボンディングとの関連を検討した。産後1ヶ月の2692人(初産婦1263人、経産婦1429人)のAutism-Spectrum Quotient (AQ)、Hospital Anxiety and Depression scale (HADS)、Mother-Infant-Bonding-Scale (MIBS)のデータを使用し、共分散構造分析を行った。その結果、AQサブスケールの社会的スキル、注意の切り替え、コミュニケーション、想像力の高い得点は、産後の抑うつの高さと関連していた。社会的スキル、注意の切り替え、細部への注目、コミュニケーションの高い得点は、産後の不安の高さと関連していた。社会的スキルと想像力の高い得点は、産後のボンティングの悪さと関連していた。一方、細部への注目の高い得点は、産後の良好なボンティングと関連していた。発達特性は、産後の抑うつと不安にはある程度の影響を与えるものの、ボンティングへの影響はかなり少ないということが示唆された。 研究期間全体を通じて、思春期以前の被養育体験、分娩歴、周産期の不安・抑うつ、母と児の間のボンディング、産後早期の児への栄養方法などとの間の因果関係の一部を明らかにすることができた。本研究で得られた知見および今後の検討でさらに得られる知見をもとに、周産期の母児のメンタルヘルス向上のための介入方法を構築していきたい。
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