研究課題
本研究は、愛知学院大学歯学部と名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野による多科連携体制を構築し、口唇口蓋裂の総合的治療のために外来を受診し、22q11.2欠失症候群を認める患児/者について、中間表現型を含めた長期追跡を行うものである。新たに構築した患者コホートで、患者のゲノム情報に加え、認知機能を合わせて評価し、ゲノム変異から神経発達症および精神障害の発症やその経過を明らかにすることで、将来の病態及び予後予測をする方法論を探索する。自閉スペクトラム症をはじめとした障害について、臨床心理士・精神科医による精神障害のスクリーニングおよび経過観察が早期介入に繋がり、予後改善に寄与するものであることを実証する。さらには全ゲノム解析を個々に行い、遺伝子の欠損した領域と精神症状との相関を多数例で分析する。既に2回の評価を行っている20名の被検者については2-3年経過しているため5月から追跡調査を実施する。新規対象者の組み入れ(2019年度で計22名)を行い、症例を集積する。精神症状の評価には、一般面接による疾患の抽出に加え、ウェクスラー式知能検査等の定量的検査法を施行している。いずれも本人・養育者からの聞き取り・行動観察・構造化面接等により臨床所見に基づいたスコアを得てカットオフ値と比較するものである。また、唾液サンプルから抽出したゲノムDNAを用いてアレイCGH(comparative genomic hybridization)解析を行い、全ゲノム解析により欠失部位の詳細な同定とその他のバリアントの確認を行う。De novo バリアント(患者のみが持っていて、両親にはない新規バリアント)であることが確認できれば、その変異が発症に関与していることの強い証左になるため、両親から得られたサンプルについてもアレイCGH解析を行っていく。
3: やや遅れている
連携施設である愛知学院大学歯学部・言語治療外来部門の担当者による口唇口蓋裂の治療のため受診する患者のファーストタッチを経て本研究の対象者には説明と同意のもと患者コホートへの組み入れを行っている。新規対象者の組み入れ数が当初の予想よりも下回っており、症例数としては22名にとどまっているため、家族会を介して研究参加による当事者側のメリットを伝えるなど広報強化を行い、更なるリクルート状況推進と目標症例数達成を目指す。
既にコホート登録している20名の被検者について5月より順次2回目のフォローアップの評価を実施していくため来院スケジュールを調整中である。精神症状の評価には、一般面接による疾患の抽出に加え、8種類の定量的検査法を施行する。いずれも本人・養育者からの聞き取り・行動観察・構造化面接等により臨床所見に基づいたスコアを得てカットオフ値と比較するものである。並行して唾液サンプルから抽出したゲノムDNA(患児、両親のトリオサンプル)を用いてアレイCGH(comparative genomic hybridization)解析を行い、全ゲノム解析により欠失部位の詳細な同定とその他のバリアントの確認を行う。データ収集を進め初回評価の結果について学会でのポスター発表に備えていく。
研究連携先の担当者の一時交代により新規患者のコホート組み入れが停滞し、スクリーニング・フォローアップ検査が当初の予定より少なかったため、次年度以降の検査に必要な経費として執行する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (3件)
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