研究課題/領域番号 |
19K08044
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
小川 しおり 日本福祉大学, 教育・心理学部, 准教授 (60814150)
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研究分担者 |
森川 真子 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (60783305) [辞退]
岡田 俊 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 知的・発達障害研究部, 部長 (80335249)
山内 彩 名古屋大学, 医学部附属病院, 主任臨床心理士 (50881984)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 22q11.2欠失症候群 / 精神医学的併存症 / ゲノムバリアント / 疾患コホート / 前方視的追跡 |
研究実績の概要 |
本研究では口唇口蓋裂の総合的治療のため愛知学院大学歯学部を受診し、22q11.2欠失症候群を認める患者について、名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療科分野にて中間表現型を含めた長期追跡を行っている。神経発達症や精神疾患につき臨床心理士と精神科医によるスクリーニングおよび経過観察が早期介入と予後改善に寄与することを実証する目的としている。 FISH法およびアレイCGH法を用いて22q11.2欠失症候群の確定診断を受け2019年12月までにベースライン評価を行った15例(男児8例、女児7例、平均年齢8.6歳)の結果解析から、心疾患、咽頭・口蓋形成異常、耳鼻科系疾患、泌尿器系疾患などの身体合併症に加えて、知的能力および適応機能は全体の8割で平均水準を下回っていた。養育者からの聞き取りで評価を行う自閉症診断面接評価(ADI-R)による発達歴からはASD診断閾値に達しないが、自閉症診断観察尺度(ADOS-2)による横断像では80%がASD特性を示し、日本版感覚プロファイル(SP)にて感覚特性を高率(93.3%)に示した。そのうち86.7%は感覚処理の「低登録(消極的反応・高閾値)」タイプに該当し、味や痛み、触覚などの五感が鈍く、反応が遅くなる傾向を示すとともに、他の感覚特性との重複も40%でみられた。上記につき2020年と2021年に学会発表を行った。フォローアップ評価を現在遂行中である。2022年度は7月にベースライン新規登録者1名を加え、コホート総数は患者18名となった。これまでの研究業績については2022年の第63回日本児童青年精神医学会総会にて「22q11.2欠失症候群児童の親子関係に関する検討ー母子の情緒的側面を踏まえた親子支援を目指してー」として発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
患者のファーストタッチとしての受け入れ機関である愛知学院大学歯学部(言語治療外来部門)に口唇口蓋裂の治療のため受診する患者に対し、本研究の対象者には説明・同意のもと患者コホートの組み入れを行っている。リクルート担当者の一時交代のため新規対象者の組み入れ数が当初の予想を下回ったことに加え、その後のCOVID-19パンデミック下での受診控えや通院中断、医療機関側の通常診療体制への影響も受けた。研究統括を進めていくうえでフォローアップ期間を迎えているコホート患者について引き続き確実に評価を行い解析を終了させる。
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今後の研究の推進方策 |
コホート登録者は総数18名でうち1名は2022年度に新規組み入れを行った。そのうち15名に対しフォローアップ評価を終了することができた。2回目のフォローアップでは面接および検査バッテリー実施と精神症状の評価として一般精神医学面接による疾患の抽出に加え、8種類の定量的検査法を施行する。いずれも本人・養育者からの聞き取り、行動観察、構造化面接により臨床所見に基づいたスコアを算出しカットオフ値と比較する。今後さらに詳細なデータ解析を行う。 並行して唾液サンプルから抽出したゲノムDNA(患者、両親のトリオサンプル)を用いてCGH(comparative genomic hybridization)解析を行い、全ゲノム解析により欠失部位の詳細な同定とその他のバリアントの確認を行う。De novoバリアント(患者のみが持っていて両親にはない新規バリアント)であることが確認できれば、その変異が発症に関与していることの強い証左になるため最終的な研究統括に備える。 今後は継続ケースの評価およびデータ解析結果の学会発表、論文作成に取り組む。あわせて、患者および家族対象の当事者アンケートにて医療面や生活面の困りごとなどのニーズのくみとりを行い、生涯にわたる多科フォローにおいて医療機関・医療者に求められる対応(とくに成人後の通院、検査・治療)について調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19への感染を懸念する患者の受診延期/中断がみられたこと、医療機関の一般診療機能の縮小傾向などの影響により、すでに登録されている患者のフォローアップ評価の来院調整に困難があったことが理由として挙げられる。さらに新規患者の組み入れが少なかったため、検査用具や消耗品等の消費も予定を下回った。今後の新規および継続ケースの評価およびデータ解析結果の学会発表、論文作成に必要な経費として執行する。あわせて、患者および家族対象の当事者アンケートにて医療面や生活面の困りごとなどのニーズのくみとりを行い、生涯にわたる多科フォローにおいて医療機関・医療者に求められる対応(とくに成人後の通院、検査・治療)を調査するため、その準備・遂行に支出を要する。
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