研究実績の概要 |
統合失調症動物モデル:Gunn ラットにて統合失調症メカニズム解明、根治治療法確立を目指し、脳内ドーパミンニューロン、グルタミン酸レセプター機能障害について免疫組織学的手法を用いて研究した。NR-1,NR-2抗体を用いてグルタミン酸レセプター機能異常を示し、ドーパミンニューロンについてはTHマーカーを用いて組織学的に確認した。またNMDAアンタゴニストであるケタミンを投与し行動変容影響効果を研究した。さらにニューロンだけでなくミクログリアに着目し過剰な活性亢進を認め、行動異常と相関していることを示した。神経活動や可塑性を制御し、統合失調症では陽性症状、陰性症状、認知機能症状の根源にかかわる抑制系GABA系介在ニューロンが低下していることを見出した。また、Gunnラットにおいて、血中のbFGF濃度の低下を確認し、統合失調症の予防薬・治療薬としての可能性を報告した。(Hayashida M, et al. Heliyon. 2019, Hayashida M, Hayashida K, et al. CNS Neurol Disord Drug Targets. 2020)。 また、bFGFの組織再生能力に着目して、bFGFが創傷治癒における中心的な役割を担っていることを総説論文として報告し、top 1 % cited articleとなっている(Yamakawa S, Hayashida K, Burns Trauma, 2019)。さらに、肥厚性瘢痕やケロイドの原因となる病態にも、bFGFが関与していると推察し、bFGFの投与によって、創傷治癒過程における異常病態を改善させることを報告し、top 10 % cited articleとなっている(Shirakami E, Yamakawa S, Hayashida K. Burns Trauma, 2020)。グロースファクターであるbFGFは、統合失調症においても脳細胞の再生治癒をもたらす可能性があると推察しており、今後も研究を続ける。
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