研究実績の概要 |
2019年6月にIRBに申請し、2020年1月に承認された。しかし、リクルートを開始し始めた同年3月頃よりcovid-19感染の拡大が懸念され、リクルート中止を余儀なくされた。その後、外来、病棟の感染防御は徹底され、運動療法のためのパーティションを設置するなど環境を整えることができてきた。また、研究室にエアロバイクを設置し、健常者における運動の認知機能、気分への影響をみる基礎的な研究を進めることができるようになった。 拡散的思考(divergent thinking: DT)と収束的思考(convergent thinking: CT)は、実行機能における意思決定に大きな影響を与える、創造的思考の基本となっている。これらの運動との関連を幾つかの検査を用いて検討して以下の結果を得ている。1)15分間の急性の運動(エアロバイク漕ぎ)であっても、DT, CTどちらも向上させるが、CTは運動後に気分が良くなければ効果が見られなくなる(Aga et al, 2021)、2)普段から比較的激しい運動や歩行を行っている人は、急性の運動でDTが向上する(Chen et al, 2021)、3) 4階までエレベータで上がるのと階段を使うのとでは、階段を登った方がDTを向上させる(Matsumoto et al, 2022)。以上の結果は認知機能の狭小化をきたすうつ病などの状態に運動が有効である背景の説明になるかもしれない。 さらに、以前からの予備的研究ではあるが、中等症-軽症のうつ病患者8名に週に2回、心肺運動負荷検査により個別化した運動量のエアロバイク漕ぎを15-25分行ってもらったところ、8週後にはうつ症状が改善し、16週後まで維持される結果が得られた(Sakai et al, 2021)。今後、より多数の患者にて広範囲の認知機能などとともに検討する必要がある。
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