研究実績の概要 |
ヒトに統合失調症様の症状を引き起こすPCPを10匹のラットに亜慢性投与(15回、10 mg/kg/day, i.p.)し、18F-altanserinを放射性マーカーとするPET測定を実施した。また、生理食塩水をPCPと同回数投与された9匹のラットを統制群とし、同様のPET計測を実施した。PET計測は薬物投与前と亜慢性投与後の2回実施し、各PET計測の約4時間前に動物の社会性を測定する2つの行動課題(sociability test:SBTとsocial interaction test:SIT)を実施した。課題中のラットの行動はデジタルビデオカメラで撮影され、コンピュータを介して外部記憶装置(SSD)に保存された。SBT課題の録画データはpythonを用いたカスタムスクリプトにより自動解析され、測定ラットの鼻先の移動軌跡・移動距離、特定領域の滞在時間等の値を算出した。SIT課題ではデータと被検体との対応関係を知らない者により目視で測定ラットが新規ラットの身体に鼻先を接触させている時間を社会的接触時間(SI時間)として測定した。実験結果から、PCPの亜慢性投与によりSBTにおける総移動距離が有意に増加し、SITにおける社会的接触時間が有意に低下した。PET計測結果ではセロトニン5-HT2A受容体の結合能が内側前頭前皮質(mPFC)領域で有意に増加し、この増加の程度とSI時間との間に有意な負の相関があることが明らかになった。この結果から、mPFCにおける5-HT2A受容体を介したセロトニン伝達の過活性が陰性症状の惹起ないしは増悪に関与している可能性が示唆された。
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