研究課題/領域番号 |
19K08059
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
松尾 淳子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第三部, 科研費研究員 (60838457)
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研究分担者 |
太田 深秀 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第三部, 客員研究員 (00582785)
功刀 浩 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第三部, 部長 (40234471)
服部 功太郎 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, メディカルゲノムセンター, 部長 (50415569)
秀瀬 真輔 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第三部, 科研費研究員 (50832763)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | sensorimotor gating障害 / プレパルスインヒビション(PPI) / 脳脊髄液(CSF) / フィブリノーゲン / モノアミン代謝産物 / HVA/5-HIAA / MHPG / 大うつ病性障害 |
研究実績の概要 |
Sensorimotor gating (SMG)とは、外界から過剰な感覚刺激を受けた時に驚愕反応を抑制し、必要な刺激に注意を向けるという感覚フィルタリング機能である。SMGの障害は感覚情報の入力段階での処理障害であり、統合失調症や気分障害患者の思考障害との関連が示唆されている。本研究は、SMG障害の分子基盤を探るべく、大うつ病性障害の患者と健常者に対して脳脊髄液(CSF)検査とプレパルス抑制検査(PPI)を同時期に実施したデータをもとに、脳脊髄中の神経炎症関連物質であるフィブリノーゲンおよびモノアミン代謝産物(ドーパミン: HVA; ノルアドレナリン: MHPG; セロトニン: 5-HIAA)と、うつ症状およびSMG障害の指標であるPPI%との関連を検討した。PPI検査は計35回の音刺激に対する瞬目の大きさを筋電位で計測し、プレパルスを伴う時の瞬目の抑制率(PPI%)を算出した。瞬目が無反応の人とPPIが極値(<0%)の人を解析から除外した。 まず、フィブリノーゲンは、うつ病患者全体ではうつの中核症状や精神不安との間に正の相関が見られ、PPIとの間で負の相関が見られた。特に男性患者で相関が顕著であった。続いて、モノアミン代謝産物は、未服薬群ではうつの重症度とHVA/5-HIAAとの間に負の相関が見られ、服薬群ではうつの重症度とMHPGとの間に負の相関が見られた。また、未服薬群ではPPIとHVA/5-HIAAなどが正に相関していた一方、服薬群ではモノアミン代謝産物とPPIとの間に相関は見られなかった。 以上より、神経炎症がうつ症状の悪化やSMG障害と関連すること、未服薬の患者ではモノアミンの代謝異常がうつ症状の悪化やSMG障害と関連することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回は予備的解析である。関連解析をする上でデータ数が多ければ多いほど正確な結果が得られるため、次年度も引き続きデータを増やして再解析する予定であったが、covid-19の影響で4月から検査はストップしている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は今あるデータの解析と論文執筆、学会発表に注力する予定である。具体的には、今回、未服薬の大うつ病性障害の患者においてフィブリノーゲンやモノアミン代謝産物の量とSMG障害との関連が明らかとなったことから、認知機能障害との関連についても、すでに同時期に施行していた認知機能検査のデータを用いて解析する。また、SMG障害の脳基盤についても、すでに同時期に施行しているMRIのデータを用いて解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は学会発表の経費の支払いが発生しなかったため共著者の旅費として予算建てていた分が余ったが、次年度で学会発表の旅費や論文投稿費用に充ててもらう予定である。また、今年度の余りと次年度の消耗品費を合わせて、解析に必要な機器を購入する予定である。
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