研究実績の概要 |
本研究の目的は、①治療抵抗性気分障害における血清中GDNFのバイオマーカーとしての可能性を、縦断的観察研究により探索すること、②GDNFを治療抵抗性気分障害の新規治療ターゲットとして捉え、GDNF発現増強作用を有する既存薬の効果を自主臨床試験により探索することである。 血清中グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)濃度と精神疾患に伴う注意障害との関連を探索する研究を実施した(Niitsu T. 2014; 2021)。薬物治療中かつ抑うつ状態にある気分障害(双極性障害及び大うつ病性障害)患者において、血清中GDNF濃度が健常者よりも低下していることを見出した。さらに双極性障害患者において、血清中GDNF濃度が抗躁薬リチウムへの治療抵抗性(治療反応性)と関連することを初めて見出した(Idemoto K, 2021)。本知見の報告は、2019年日本うつ病学会優秀発表賞(筆頭演者:井手本啓太)を受賞し、高い評価を得た。 双極性障害と大うつ病性障害の鑑別診断バイオマーカーとして、プロテオミクス解析から見出した血小板由来成長因子(PDGF-BB)の有用性を世界で初めて報告した(Idemoto K, 2021)。本知見は、2020年に国際双極性障害学会(シドニー)、日本神経精神薬理学会等合同年会、2021年日本うつ病学会、日本プロテオーム学会(筆頭演者:井手本啓太)にて報告した。 新型コロナウイルス感染症流行により被験者リクルートが停滞したが、その間、一般市民や千葉大学病院外来患者を対象とした不安・抑うつに関するストレスの影響を把握するアンケート調査を実施した(Shiina A, 2020;2021)。 これまでに双極性障害患者62例の治療前後の血液サンプルを収集したため、今後新たな資金で上記バイオマーカーの縦断的評価を行い、さらなる治療抵抗性気分障害の病態解明と新規治療薬開発へと発展させる。
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