研究課題
本研究は,研究代表者らが開発し2004年に公表したモンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)構造化面接(SIGMA)に含まれるうつ病の重症度を評価するための,項目2~10の9項目の症状評価項目に含まれる55の質問文をベースに,AI(人工知能)での重症度評価に適した質問文となるように改良して,これらの質問文に対する回答を実際の評価面接場面で収録した音声データをもとに,①研究代表者が定義した重症度評点,②書き起こしたテキストファイル,③音声WAVファイルの3点セットのデータとして抽出し,これらを深層学習モデル用の学習データとして集積し,うつ病の重症度評点を推定するAI(人工知能)うつ病重症度評点推定機器の中核部分となるプログラムを作成することである。本年度はこれまでに試作したAI機器の精度を高めるための深層学習モデル用のデータの集積をすすめるとともに,新たなうつ病患者症例におけるデータを収集する過程で,本機器に採用した音声認識ソフトウェアで得られたテキストファイルデータの誤認識に対する評点を是正するための手法についての検討を加え,AI機器の精度を高める過程で見いだされた様々な誤評点を生み出す要因となりうる重症度評価のためのアルゴリズムの改良やAI評点を導く試作機器プログラムの改変を繰り返し行った。具体的には,学習用のデータを集積して,重症度評点を推測する精度を高める過程で,それぞれの質問文に対する回答から評点を推定するモデルの性能を評価して,モデル構造や活性化関数のチューニングを行うなどのプログラミングの改良を行うとともに,臨床面接の手法としては今回の試作機器に含まれていない質問文の追加,現在の試作機器に含まれている質問文の削除,質問文の改訂,質問順序の変更,矛盾する回答に対して確認する質問文の適宜追加など,AI面接のアルゴリズムの再構築についても検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
今回開発を進めているAIうつ病重症度推定機器による重症度評価の評点と熟練した精神科医による重症度評点との一致率は現時点では必ずしも高くはないものの,このAIうつ病重症度推定機器からうつ病患者への質問を行い,うつ病患者が回答した場合,重症度評点を推定するまでの試作機器プログラムは完成し,これを利用して深層学習用のデータの集積も順調にすすんでいる。
今後はAIうつ病重症度推定機器プログラムの更なる精度の向上をめざして,深層学習モデル用のデータのさらなる集積,誤評価を引き起こす要因となりうる重症度評価のためのアルゴリズムの再検討やAIプログラムの改良を引き続き行い,最終的には熟練した精神科医による重症度評価と一致するレベルまで精度を高める計画である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件)
Nordic Journal of Psychiatry
巻: 73 ページ: 546~550
10.1080/08039488.2019.1665708
巻: 73 ページ: 323~330
10.1080/08039488.2019.1632381