研究課題/領域番号 |
19K08071
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
稲田 俊也 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (00184721)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | うつ病 / 評価尺度 / 機械学習 / 音声認識 / 自然言語処理 / 深層学習 / 人工知能 / 構造化面接 |
研究実績の概要 |
本研究は,研究代表者らが開発し,2004年に公表したモンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)構造化面接(SIGMA)に含まれるうつ病の重症度を評価するための質問文をベースに,AI(人工知能)での重症度評価に適した質問文となるように改定し,被験者からの回答を実際の評価面接場面で収録した音声データをもとに,①研究代表者が定義した被験者の回答例に対する重症度評点,②書き起こしたテキストファイル,③被験者が回答した音声WAVファイルの3点セットのデータとして抽出し,これらを深層学習モデル用の学習データとして集積し,うつ病の重症度評点を推定するAI(人工知能)うつ病重症度評点推定機器の中核部分となるプログラムを作成し,最終的にはこのAI評価システムを用いて実臨床においてうつ病の重症度評価を行えるようにすることである。本年度は昨年度に引き続き,これまでに試作したAI機器の精度を高めるための深層学習モデル用のデータの集積をすすめるとともに,AI機器の精度を高めるための音声認識や自然言語処理の手法についての改良や新たな技術の追加,重症度評価のためのアルゴリズムの改良やAI評点を導く試作機器プログラムの改変を繰り返し行った。具体的には,学習用のデータを集積して,重症度評点を推測する精度を高める過程で,それぞれの質問文に対する回答から評点を推定するモデルの性能を評価して,モデル構造や活性化関数のチューニングを行うなどのプログラミングの改良を行うとともに,臨床面接の手法としては,被験者からの回答で音声認識が不完全であった箇所はマニュアルで評価者が入力して修正できるように改良したり,質問文をよみ上げた直後に被験者が回答できるような工夫を加えたり,矛盾する回答に対して追加の質問文を行ったりするなど,AI面接のアルゴリズムの再構築についても検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の時点で完成した試作システムと比較した場合,パソコンやタブレットでの画面上の見た目はそれほど変わりがないものの評価精度を高めるための様々な工夫を加えた結果,AIうつ病重症度推定システムを用いた重症度評価の評点と熟練した精神科医による重症度評点との評価者・評価機器間の一致率は,昨年度集積したデータのみで解析した場合よりも今年度集積したデータを加えて実施した場合,有意とは言えないものの上昇傾向にあることから,AIうつ病重症度推定システムの精度は順調に向上しつつとあると考えている。しかし,被験者の回答がこれまでの学習内容になかった場合の評価者・評価機器間の評点の一致率が依然として低いため,さらなる症例追加で学習を繰り返すことや,自然言語処理システムのさらなる改良が必要と思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度も昨年度や今年度に引き続き,これまでに試作したAI機器の精度を高めるための深層学習モデル用のデータの集積をすすめるとともに,AI機器の精度を高めるための音声認識や自然言語処理の手法についての改良や新たな技術の追加,重症度評価のためのアルゴリズムの改良やAI評点を導く試作機器プログラムの改変を繰り返し行う予定である。来年度は最終年度であるため、AIうつ病重症度推定システムの精度がどの程度向上したかを実証するため,今年度までに集積したデータと,来年度集積したデータを用いて,AIうつ病重症度推定システムを用いた重症度評価の評点と熟練した精神科医による重症度評点との評価者・評価機器間の一致率を算出し、実臨床で使用できるレベルにまで向上しているかどうかを評価するとともに,特許性のない既存の音声認識技術や自然言語処理手法を用いたAIうつ病重症度推定システムで評価した場合の評価精度(熟練した精神科医による評価との一致率)を算出し,今後,精度を画期的に高めることができるような特許性のある技術を追加したAIうつ病重症度推定システムとの比較ができるコントロールデータとして国際誌に公表する。
|