研究課題
非定型抗精神病薬は、NMDA受容体機能阻害に伴う視床皮質路のグルタミン酸伝達機能を、ドパミン受容体だけではなく代謝型グルタミン酸受容体機能を介し抑制していた。Lurasidoneも皮質視床グルタミン団伝達を抑制していたが、5-HT7受容体を介した、視床皮質路のグルタミン酸伝達機能の抑制が関与していた。一方、注意欠陥多動性障害に有効なguanfacineの慢性投与はノルエピネフリン機能を介して、視床皮質路のグルタミン酸伝達機能の抑制が関与していた。これらの知見に加え、非定型抗精神病薬はアストロサイトに特異的に発現するコネキシン43の機能を活性化し、抗うつ薬は逆に機能を抑制した。この相違は、情報安定にかかわる新たな仮説として、三者間伝達機能を亢進する場合鎮静あるいは抗躁効果に寄与し、逆に三者間情報伝達機能抑制は抗うつ効果に関連する可能性が示唆された。唯一、ルラシドンは抗精神病薬でありながら、コネキシン43機能を抑制したが、これは5-HT7受容体阻害を介しているものであった。特に臨床上、ルラシドンは抗躁効果よりも抗うつ効果が強い抗精神病薬であることから、我々の仮説を支持する所見である。以上の薬理学的、分子生物学的、行動薬理学的解析結果は、従来の視床皮質路のグルタミン酸伝達機能の低下が認知機能障害に関与するとした仮説とは異なり状況変化を伝達する、視床への感覚入力を統合する機能が、視床グルタミン酸神経の過剰興奮により相対的な消退状態に陥り、結果として認知機能が低下しているように観察される可能性を示したことになる。
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