研究実績の概要 |
たんぱく質構成アミノ酸はα位に不斉炭素を有し、お互いに光学異性体となるL体とD体が存在する。D体アミノ酸は生体内含量が低いものが多いが、D体とL体のアミノ酸を区別して検討することにより、新規のうつ病の病態を解明し、バイオマーカーを開発する目的で本研究を遂行した。 既報の我々の研究でCE-TOFMSによる測定でうつ病において高グルタミン血症を認めたことから、独立したコポートを用いて酵素法により血漿のL型グルタミン濃度を測定した。結果、治療前うつ病患者群と治療後うつ病患者群と対照健常者群の3群で違いを認める傾向を見出した。続いて、LPS投与うつ病モデルマウスと対照モデルマウスから脳組織と血漿を採取し、酵素法によりL型グルタミン濃度を測定した。結果、皮質、線条体、海馬、血漿、いずれも、2群間で有意な違いを見出すことができなかった。 ヒト血漿とうつ病にモデル動物脳(皮質・海馬)を蛍光誘導化処理後に二次元HPLCを用いて22種のアミノ酸をD体とL体に区別して測定した。結果、ヒト血漿で測定可能であったD体アミノ酸は、Asn, Ser, Ala, Pro, であった。モデル動物脳で測定可能であったD体アミノ酸は、Ser, Asp, Alaであった。ヒト血漿とうつ病にモデル動物脳の両方でD体が測定できるアミノ酸は、SerとAlaであることがわかった。続いて、D-serine colorimetric kitを用いてヒト血清とうつ病にモデル動物脳のD型Ser濃度を測定したが、検出限界閾値濃度以下であった。Total D-Amino Acid Assay kitを用いてうつ病患者、双極性障害患者、対照健常者の血漿総D型アミノ酸を測定して比較をしたが、3群間に有意な違いは認めなかった。一方で、これら血清総D型アミノ酸濃度は、年齢と性別に関係することがわかった。
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