研究課題
OCDは様々な認知機能障害と関連している。なかでも反応抑制障害(一旦開始した行動を途中で止めることの困難さ)はOCD患者だけではなく近親者にも存在するため、強迫症状の発症・増悪に特に重要な役割を有していると考えられる。これまでの研究から、反応抑制障害には前補足運動野-下前頭回-基底核(抑制関連の皮質線条体回路)が中心的な役割を担うことが知られ、OCDでも反応抑制課題を実施中にこれらの脳領域の異常活性化を示す報告がなされていた。しかしそれらの「認知課題実施時」の異常の基盤となる「安静時」においてどのような変化が存在するのかは明らかになっていなかった。今回我々はOCD患者と健常対照者を対象に、反応抑制機能と安静時機能的MRIのデータを取得し、比較を行った。その結果、従来から反応抑制機能に特異的な関連が示唆されていた前補足運動野-下前頭回だけではなく、様々な認知機能に幅広く関与する大域的な脳ネットワークにおいても違いが存在することが明らかになった。本結果は、これまでの反応抑制関連の皮質線条体回路だけではなく、脳全体の大域的な機能ネットワークがOCDの反応抑制障害に関連していることを示唆するものであり報告を行った。これまでの研究では、OCD患者は安静時に上記の脳全体の大域的な機能ネットワーク(同期して働く複数の脳領域のグループ)において異常を示すことが知られていた。これらの変化についてOCD患者だけではなく症状を認めない近親者にも存在する可能性を検討するためOCD患者とその近親者、健常対照者の比較を行った。その結果、OCD患者だけでなく近親者にも共通する大域的な脳機能ネットワークの異常が存在することが明らかになり、報告を行った。加えて、OCD患者は小脳と大域ネットワークの安静時における機能的結合にも異常があることを報告した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
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