研究課題
我々は、うつ病の動物モデルを研究する過程で、「うつ病モデルである反復拘束ストレス(RS7)ラットの扁桃体で、グルココルチコイド受容体(GR)の阻害因子であるFKBP5が増加している。」という所見を得た。この所見の病態的意義を解明すべく本研究を開始した。免疫染色では、扁桃体中心核(CeA)において、GRおよびFKBP5が共発現している神経細胞が多数認められた。RS7では血中コルチコステロン(CORT)が増加しており、CeAからCRHの産生核である室傍核(PVN)へは神経投射が存在する。これより、「RS7によりGRを介したCeAからPVNへの促進性の神経伝達が亢進し、これによりCRHの産生が増加し、最終的にCORTが増加した」という病態を想定し、「CeAのFKBP5高値はGRの過剰刺激に対する代償性変化である」と予想した。しかし、RS7ラットではPVNのCRH mRNAおよび血中ACTHは正常であることが判明したため、CeAでのFKBP5増加はCORT増加に関連した変化ではなく、独自の病態的意義を有するものと考えた。この方向で研究を進める手がかりを得るために、抗うつ薬の作用と関連しているPI3K/Akt/mTOR系およびGSK3β/β-カテニン/Wnt系の分子をRS7ラットで測定した。その結果、扁桃体でAktのリン酸化(Ser-483)が亢進していた。一方、mTORは他の分子とmTORC1およびmTORC2という複合分子を形成して機能する。これらの活性化体であるpmTORC1(Ser-2448)およびpmTORC2(Ser-2481)を測定したところ、海馬でpmTORC1が減少していたが、扁桃体では変化なかった。GSK3βおよびpGSK3βはいずれの脳部位でも変化なかった。今後、扁桃体でFKBP5とAktリン酸化の両方に関連するような病態変化を追求してゆく予定である。
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European Journal of Pharmacology
巻: 923 ページ: 174930~174930
10.1016/j.ejphar.2022.174930
Molecular Psychiatry
巻: 未定 ページ: 未定
10.1038/s41380-021-01318-4