研究課題/領域番号 |
19K08083
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
黒岩 真帆美 久留米大学, 医学部, 助教 (20585690)
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研究分担者 |
大西 克典 久留米大学, 医学部, 助教 (10626865)
西 昭徳 久留米大学, 医学部, 教授 (50228144)
首藤 隆秀 久留米大学, 医学部, 講師 (70412541)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ドパミン / ノルアドレナリン / うつ病 / 抗うつ薬 / 海馬 / 歯状回 / D1受容体 |
研究実績の概要 |
本研究では精神疾患と海馬歯状回ドパミン・ノルアドレナリン入力バランスの変化との関連の解明を目指している。前年度の検討で、非ストレス負荷マウスでは、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬デシプラミンの抗うつ効果および歯状回ドパミンD1受容体発現の変化が認められなかったことから、今年度はドパミンとセロトニン、ノルアドレナリンの相互作用について検討するために、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であるデュロキセチンおよびミルナシプランを用い、行動解析と歯状回ドパミンD1受容体発現解析を行った。デュロキセチンあるいはミルナシプランの慢性投与実験では、投与量と投与期間を変化させて条件検討を行った。いくつかの条件では抗不安作用が認められた。しかしながら同一条件で歯状回のドパミンD1受容体の発現量を解析したが、変化は認められなかった。一方で、拘束ストレスを短期間(5日間)与えた後にSNRIデュロキセチンを腹腔内に急性投与し行動解析を行った結果、ストレス負荷のみでは不安様行動に変化は認められなかったが、ストレス負荷後のデュロキセチン急性投与により新奇環境摂食抑制試験において不安様行動が増加した。この条件では尾懸垂試験における抗うつ作用は認められた。また、非ストレス群においてもデュロキセチンの急性投与は不安様行動を増加させた。 これらの結果より、ノルアドレナリンの増加は一過性の場合と慢性的な場合とで、ストレス反応に対する影響が異なることが示唆された。今後はノルアドレナリンとセロトニン、ドパミンとの相互作用について、疾患モデルマウスを用いて検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ノルアドレナリンのストレス応答および抗うつ作用における役割の検討は、おおむね計画通りに進行している。一方で、DISC1遺伝子改変マウスの繁殖において必要な遺伝子型のマウスの出生が期待通りでなく、必要な動物の確保が困難となり、多少の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
DISC1遺伝子改変 (変異型DISC1過剰発現) マウスの出生が期待通りでなく、必要な動物の確保が困難な状況が続いていることから、他の精神疾患モデルマウスを用いた検討を平衡して行う。その候補として、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)投与による炎症性腸疾患モデルにおけるうつ様状態の解析を予定している。このモデルマウスを用いて、表現型を評価する行動解析と遺伝子・タンパク質発現を評価する生化学的解析により検討する。
生化学的解析では、各脳部位(前頭前皮質、海馬、側坐核、青斑核)においてドパミンシグナルとノルアドレナリンシグナルを中心に、リアルタイムRT-PCR法による遺伝子発現の変化、ウエスタンブロット法によるタンパク質発現量の変化を解析する。 さらに、ファイバーフォトメトリーシステムとモノアミンセンサー(ドパミンセンサー、ノルアドレナリンセンサー)を用いて、脳内のドパミンとノルアドレナリンの動態を高時間分解能で解析し、行動の変化と対応させ詳細なメカニズムを解明する。 これらの解析により、精神疾患の病態および治療薬の作用発現とモノアミンバランスとの因果関係を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:DISC1遺伝子改変マウスの繁殖において必要な遺伝子型のマウスの確保が予定通りに進まず、このマウスを用いた実験に使用する予定の試薬等の購入を持ち越したため。 また、成果の発表も次年度に持ち越したために、次年度使用額が発生してしまった。 使用計画:遅れている実験と、成果の発表を次年度に予定しており、その費用として使用する予定である。
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