研究課題/領域番号 |
19K08085
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
山田 美佐 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 科研費研究員 (10384182)
|
研究分担者 |
山田 光彦 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 部長 (60240040)
三輪 秀樹 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 室長 (80468488)
古家 宏樹 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 室長 (90639105)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ストレス / アストロサイト / リゾホスファチジン酸 |
研究実績の概要 |
これまでに申請者らは、リゾホスファチジン酸(LPA)を実験動物の脳室内に投与するとLPA受容体を介してうつ、不安様行動が惹起することを複数の情動行動試験により明らかとした。また、うつ病モデル動物脳の蛍光免疫2重染色により、海馬のアストロサイトにおいてLPA受容体の発現が増加することを発見した。これらのことから、うつ病の病態に、LPARを介したアストロサイトの機能変化が関与するとの仮説に至った。 初年度は、社会的敗北ストレスモデルを確立し、LPAシグナル伝達系の下流Rho kinase (ROCK) の阻害薬であるFasudilを投与したときの情動行動変化を強制水泳試験により検討した。その結果、社会的敗北ストレス負荷の30分前にFasudilを投与することにより、無動時間の延長が抑制されることが明らかとなった。 一方、これまでに、LPAと同様ROCKを活性化するthronbinによりグルタミン酸トランスポーターが減弱することが報告されている。そこで、社会的敗北ストレス負荷マウスの前頭葉皮質、背側および腹側海馬におけるグルタミン酸トランスポーター(GLT-1、GLAST)の発現をリアルタイムPCR法により定量した。その結果、社会的敗北ストレス負荷によりGLT-1の発現低下が認められ、Fasudilの投与により発現の回復が認められた。一方、他の脳部位およびGLASTの発現には変化は見られなかった。 これらのことから、うつ病の病態に、LPAシグナル伝達の亢進を介したグルタミン酸神経系の調節異常が関与する可能性が示唆された。そこで次年度は、マイクロダイアリシス法により、細胞外グルタミン酸濃度を測定する計画である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、社会的敗北ストレスモデルにおけるストレス反応のメカニズムとして、LPAシグナル伝達を介したグルタミン酸神経の調節異常が関与する可能性を示すことができた。また、社会的敗北ストレスモデルを用いたFasudilによるストレス反応の抑制等の研究結果が欧文誌への掲載された(Nakatake et al., 2020)。 以上のことから、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果により、社会的敗北ストレスモデルにおけるストレス反応のメカニズムとして、LPAシグナル伝達を介したグルタミン酸神経の調節異常が関与する可能性を示した。そこで今後の研究推進方策として、細胞外グルタミン酸濃度を測定する。具体的には、LPAまたはLPA受容体作動薬を局所灌流し、透析液中のグルタミン酸濃度をin vivo マイクロダイアリシス法により測定する計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で、計上していた旅費および人件費を使用しなかったこと等により次年度使用額が生じた。これにより繰越となる助成金については、マイクロダイアリシスに用いるカニューレおよび消耗のため分析能が低下しているるアミノ酸カラムを購入する計画である。
|