研究課題/領域番号 |
19K08086
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
竹内 絵理 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第四部, リサーチフェロー (70712777)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ω-3多価不飽和脂肪酸 / 情動行動 |
研究実績の概要 |
不安、抑うつなど負の情動は精神疾患の病態に影響を与えると考えられており、これら負の情動と体内環境は双方向性に作用しあうことが示唆されている。多くの疫学調査から体内に摂取されたω-3多価不飽和脂肪酸はうつ病の症状を改善させることが示されているが、その作用メカニズムについては不明であった。本研究では、ω-3多価不飽和脂肪酸を食摂取したマウスの情動行動を調査し、行動変化を生じさせる神経機構について明らかにすることを目的とする。 我々の先行研究において、ω-3多価不飽和脂肪酸高含有餌(高ω-3餌)で6週間飼育したC57BL/6Jマウスのオープンフィールドテスト、明暗選択テスト、Y字迷路テストは対象餌で飼育したマウスと差がないことが示されている。該当年度では新たな行動解析を行い高ω-3餌摂取によるバーンズ迷路テスト、3チャンバー社会性テストの結果には影響はなかったが、強制水泳テストおよび尾懸垂テストにおいては高ω-3餌摂取したマウスの無動時間が有意に減少した。これらのテストは抗うつ薬のスクリーニングに頻用されることから、動物のうつ病態に関連する脳領域(海馬、扁桃体、内側前頭前野、側坐核)の脳内モノアミン(ノルアドレナリン、セロトニン、ドパミン)およびその代謝物含有量を高速液体クロマトグラフィーにより定量した。その結果、側坐核におけるドパミン代謝物の含有量が有意に増加することが明らかとなった。そこで側坐核にドパミン受容体拮抗薬を微量投与し強制水泳テストを行ったところ、高ω-3餌摂取による無動時間減少は消失し、行動変化の責任脳部位が側坐核ドパミン神経系であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は高ω-3餌摂取したマウスの行動を新たにスクリーニングしなおし、負の情動行動解析を完了した。電気生理学的解析の開始時期に計画から遅れが生じたため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
高ω-3餌摂取による行動変化の性差についてより詳細な知見を得るため、雌雄マウスにおける神経活動について電気生理学的解析を行う。まずは、そのための神経活動操作法を確立し、ニューロン活動の性差について検討する。さらには、性差が生じる分子機構についても検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の実験計画から一部実施する順序を変更したため次年度使用額が生じた。次年度にウイルスベクターおよび抗体の購入に使用する予定である。
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