研究課題
2022年度は、まずQOL調査における味覚障害と口腔線量について解析を行い、NTCP(Normal Tissue Complication Probability)モデルを算出した。IMPT(強度変調陽子線治療)の有用性を検証するために、同患者において仮想で作成されたエックス線によるIMRT(強度変調放射線治療)プランでNTCPを計算して比較したところ、IMPTにおいて有意に味覚障害となる確率が低かった。同時期にIMPTとIMRTで治療された患者においてNTCPを比較した所、IMPTにおいて有意に味覚障害となる確率が低かった。一方で、実際の治療後に発生した味覚障害を比較した所、IMPTで低かったものの、有意差を示すには至らなかった。粘膜炎による嚥下障害は、プランから計算されたNTCPはIMPTにおいて有意に低く、実際の障害もIMPTで有意に低かった。口渇と皮膚炎においては、照射中の障害はIMPTとIMRTで差がなかった。一方で、照射後6か月時点では味覚障害、粘膜炎による嚥下障害、口渇がIMPTで有意に低く、これらの障害の回復におけるIMPTの有用性が示唆された。NTCPモデルの妥当性検証が必要と考えられ、味覚障害と嚥下障害についてバリデーションを行った。キャリブレーションを行うことで一致度が改善した。粘膜炎を抑える陽子線治療法を検討する中で、線量分割の変更による改良の可能性が示唆された。RBE(生物学的効果)をvoxel単位で計算した上で様々な線量分割をシミュレーションし、過分割照射において粘膜障害と抗腫瘍効果のバランスが最適な線量分割が導かれ、有用性が示唆された。これら一連の研究によってIMPTによる「辛くない」頭頸部癌放射線治療法の技術開発を行い、当施設の初期経験において、特に味覚障害、粘膜炎による嚥下障害、口渇の回復におけるIMPTの有用性が示されたものと考える。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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