本研究ではがん局所に対する小線源療法(組織内照射)と化学療法との併用療法を可能とする新たな温度応答性生分解性高分子ミセル製剤の開発を進めている。従来の金属製線源を使用した小線源療法とは異なり、治療後は体内で分解され体外に排出されることが期待される他、キャリアとする高分子ミセルが様々な治療用薬剤を封入することができる性質を利用することで、化学療法との併用療法を可能になるなどのメリットが得られると考えられる。その結果、放射線単体による治療よりも、がんに対する高い治療効果が得られると期待される。 昨年度までの研究では、キャリアとなるミセルの合成と評価、がん細胞を用いたインビトロ条件における殺細胞効果の評価を進めてきた。これらの結果を踏まえ本年度研究では、治療用放射性核種、抗がん剤の一種であるドキソルビシンの両方または片方を封入した温度応答性ミセルを用い、これを担がんモデルマウスの皮下移植がんに直接注入することで、インビボ条件におけるがんの治療効果評価を進めた。その結果、抗がん剤を併用することによって、治療用放射性核種による小線源療法のみの治療よりも、より高いがんの治療効果を得ることができることを確認した。これにより当初の研究目的を達成した。 一方、より実用性を高めていくために必要な問題点も見出された。これらの新たな課題については今後、新たな研究計画を立案・実施し、より実用性の高いものになるように検討を行う予定である。
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