研究実績の概要 |
固形腫瘍組織に存在する腫瘍随伴マクロファージ(TAM)のM2型は腫瘍細胞の増殖、転移や腫瘍組織内の血管新生を促進し、腫瘍の悪性化に関与していることが最近報告されている。そこで本研究では、M2型マクロファージではマンノース受容体(CD206)、Tissue Factor(TF)が高発現していることに着目して、「機能ユニット結合型多機能分子プローブ」というプローブの分子設計概念を用いて、CD206およびTFに対して特異的に結合し、化学合成が可能なペプチドを母体とする核医学診断剤を開発し、これまで適切な手法のなかった固形腫瘍の性状診断を可能とする核医学診断法の確立を目指す。 令和2年度は、CD206を標的とする核医学診断剤を3剤(111In-CDP1,111In-CDP2,111In-CDP3)合成し、それぞれ放射化学的純度95%以上で得た。得られた各化合物について、Ni-NTAビーズおよびCD206リコンビナントタンパク質を結合したNi-NTAビーズ(CD206-Ni-NTAビーズ)に添加し、添加1時間後における各ビーズの放射能を測定したところ、111In-CDP3のみNi-NTAビーズと比べてCD206-Ni-NTAビーズに対して高い放射能を示した。また、111In-CDP3は担がんマウスにおいて良好な体内動態を示した。以上の結果より、111In-CDP3はCD206を標的した核医学診断剤としての基礎的性質を有することが示唆された。 また、各標的生体分子に対する親和性の向上を目指し、RI標識2価リガンド薬剤を容易に可能とする二官能性キレート剤も併せて開発した。
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