固形腫瘍組織に存在する腫瘍随伴マクロファージ(TAM)のM2型は腫瘍細胞の増殖、転移や腫瘍組織内の血管新生を促進し、腫瘍の悪性化に関与していることが最近報告されている。そこで本研究では、M2型マクロファージではマンノース受容体(CD206)、Tissue Factor(TF)が高発現していることに着目して、「機能ユニット結合型多機能分子プローブ」というプローブの分子設計概念を用いて、CD206およびTFに対して特異的に結合し、化学合成が可能なペプチドを母体とする核医学診断剤を開発し、これまで適切な手法のなかった固形腫瘍の性状診断を可能とする核医学診断法の確立を目指す。 令和4年度は、これまでに開発した核医学診断剤をPETイメージングに応用するため、PET核種である"68Ga"のサイクロトロン(液体ターゲット)製造法について検討を行った。その結果、従来68Gaイオンの生成に用いられている68Ge/68Gaジェネレーターと同等以上の放射能量をサイクロトロンを用いて安定的に製造できることを確認するとともに、多目的合成装置を用いて遠隔操作により68Gaイオンの精製およびDOTAキレートを有する標識前駆体との標識反応・精製を高効率に行えることを確認した。本結果より、令和3年度までに開発したCD206およびTFを標的とする核医学診断剤前駆体に上述の手法にて製造する68Gaイオンを導入することにより、本核医学診断剤をTAMの性状鑑別のためのPETイメージングへ応用できる可能性が示された。
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