研究課題/領域番号 |
19K08107
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
林 直樹 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (00549884)
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研究分担者 |
安井 啓祐 藤田医科大学, 医療科学部, 助教 (50804514)
浅田 恭生 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (60308848)
森 慎一郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 物理工学部, グループリーダー(定常) (60415403)
武村 哲浩 金沢大学, 保健学系, 教授 (70313674)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 赤外線深度 / 体表面監視 / キャリブレーション / 放射線治療 |
研究実績の概要 |
2020年度はコロナ禍の影響により共同研究施設間の移動が制限されたため、ハードウェアの開発およびその実証検証について十分に行うことができなかった。そのため研究室ベースでのソフトウェアの開発と受光アルゴリズムの構築を重点的に進めた。研究開発の進捗については第121回日本医学物理学会に演題登録をし、受理されたところである。2021年度に検証実験の多くの項目を移行させることになった。 2020年度前半は赤外線深度センサーを有する市販の装置を改良し、カメラで検出する位置を治療室の座標に変換するためのキャリブレーションの手順を実現した。粒子線治療施設や放射線治療施設にて実際の検証実験を行う予定であったが、コロナ禍による移動制限により実現できなかったため、ファントムを用いて静止状態の検証を行った。 2020年後半は検証結果をもとにキャリブレーションの正確度の向上のためにp2pアルゴリズムの活用やRGB系の座標を世界座標系へ変換する方式の検討を行なった。ここまでの検出能力について改めて静止状態での検証を行い、実際の位置との計算位置との差異は1.4 mmまでに収めることができた。ここまでの開発結果を2021年4月に開催される第121回日本医学物理学会学術大会に演題登録をし、アクセプトされた。 しかしながら、実際の放射線治療装置を活用した総合的な検証やハードウェアの開発および非剛体レジストレーションを活用した照合ソフトの研究開発は研究開始当初のスケジュールよりやや遅れており、最終年度に実施する項目として振り替えることになった。これに伴い、ハードウェアとソフトウェア双方の検証実験は当初予定していた1年間という期間を設けることができず、数ヶ月に短縮せねばならないが、2020年度末現在は研究開始当初想定した開発項目の半分の項目は実現できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度までに赤外線深度センサーを用いての三次元での位置検出とカメラ座標系から世界座標系への変換を可能とすることを目的に、受光系と検出信号の改良を行った。この改良により、RGB画像から世界座標系への変換を行うことができるようになった。その変換アルゴリズムを複数の方法で比較し、p2pによる方法が処理時間と検出正確度の観点から妥当であることがわかった。RGB画像からグローバル座標系への変換にはコンピュータビジョンの理論が必要であり、その演算処理に一定の時間を要するために現在のハードウェアの計算環境からリアルタイム性が十分ではないことが課題である。 また、コロナ禍による移動制限により、実際の現地での開発を実施することができなかったことから、研究室ベースでのシミュレーションや簡単な実験系での実証までしか行うことができなかったため、動体や検出困難な形状に対する受光における具体的な問題については洗い出しを行うことができていない。そのような意味で、研究開始時当初の研究計画に照らし合わせるとやや遅れていると判断する。 しかし、研究開始当初の評価項目の半分程度はすでに実現できているので、課題となる部分は検出のリアルタイム性と動体に対する検出を放射線治療装置のある環境で実施する項目である。この項目を2021年度に集中的に実施することにより挽回を図る。そのために、シミュレーション頻度の増加や新しいハードウェアの購入などを実施して計算環境の向上をする予定である。そのためのコストに必要な費用は研究計画書の段階で予定していた2020年度中の国際学会での発表や共同研究施設での計測ができなかった分を充てる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度までの研究進捗としては赤外線深度センサーを用いての三次元での位置検出とカメラ座標系から世界座標系への変換を可能としたことと、その進捗を研究室ベースでのシミュレーションと簡易的な実験系で検証したところまでである。2021年度の課題としては、より現実に近い状況での実証実験の実施と、位置照合のための非剛体レジストレーションアルゴリズムの換装である。これを実現するために、2021年度は当初の研究計画から変更をして実証実験をメインとすることとクラウドデータボックスを活用しての開発スクリプトをウェブ上で共有することなどの対策を行った。また、p2pの計算処理がリアルタイム性を望むには不十分であることがわかったため、研究室の計算ワークステーションと赤外線深度センサに接続するポータブル型パソコンの処理速度を向上させることが必要である。2021年度の予算執行では当初からの予定を変更し、これらの対策に充てる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による移動制限により、2020年度に予定していた共同研究施設にての実証実験とハードウェアの開発および国際学会での発表に充てていた交通費とその開発費用の支出がなかったためである。実証実験については2021年度に実施する分にあてるので支出枠として延期したのみであるが、 国際学会の発表にあてていた交通費の費用については、研究開発を加速させるためのハードウェアの更新にかかる費用に使途を変更する予定である。
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