研究課題/領域番号 |
19K08114
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
兵頭 秀樹 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (30306154)
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研究分担者 |
的場 光太郎 北海道大学, 医学研究院, 講師 (00466450)
神 繁樹 北海道大学, 医学研究院, 博士研究員 (60531845)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 死後画像 / 死後CT / 死後MRI / 薬物中毒 / 熱中症 / 喘息重積 / 髄液蛋白 |
研究実績の概要 |
薬毒物中毒等に対する死後CT・MRI画像撮像による定量評価は期待されている。本研究では動物モデルで得られた評価基準をもとにヒトにおける死後CT・MRI画像検査の評価をもとに診断に寄与する所見を明らかにすることを目的とした。 初年度の本研究では、MRIによる死後画像所見について検討を行い、死因究明に必要な画像シークエンス(T2wi、T1wi、DWI、FLAIR)を中心とした、中枢神経並びに心臓循環器系に対する実施を行い、異常所見の抽出を行った。期間中、熱中症事例に対する死後MRI撮像により、死後CTでは指摘困難な所見の同定に成功し、解剖及び病理組織学的検査にて確定診断に至った事例を経験した。また従来まで報告されていなかった喘息による死亡事例に対する特異的死後所見について明らかにし、症例報告する機会を得た。 2年目(本年度)では、エタノール・カフェイン・抗精神病薬等により死亡に至った事例に対し死後経過に伴うCT・MRI画像変化を評価するとともに、薬毒物評価を実施した。エタノール中毒例では高頻度に脂肪肝を認め、誤嚥窒息を伴っている事例では死後CTにて気管内の含気低下を認めた。しかし、これらの所見は非特異的であり、中毒例を特定するには至らなかった。カフェイン・抗精神病薬中毒例では、死後CTにて特徴的な所見は認めなかった。死後MRI撮影では、死後経過のため有効な指標を得ることはできなかったが、髄液MRI検査にて髄液蛋白濃度が同定可能であることが明らかになり、薬毒物中毒を示唆する客観的指標の一つとなりうる可能性が示唆された。 3年目(最終年度)では、エタノール中毒事例で認められる脂肪肝に追加できる指標の同定を進め、髄液MRI検査の対象例で高蛋白事例についての検討し、解剖拒否事例等(検体採取不能事例)でも薬毒物中毒等を示唆する所見について明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に、死後MRIを実施する際に必要な画像シークエンスを決定することができ、ご遺体を用いた画像検査についても複数例で実施した。撮像部位として、脳を主とする中枢神経系並びに心臓を主とする循環器系を選択し、複数例で死後CTでは同定不能であった異常所見を明瞭に同定する機会となった。また、ウィルス性心筋炎事例等でMRI所見と組織生検診断を実施し、死後画像と法医解剖並びに組織学的検査の相補的活用の事例を重ねる機会となった。 2年度は、エタノール中毒事例にみられる脂肪肝所見を明らかにし、死後CTで脂肪肝を認めた際に死因究明のために実施が必要な検査フローチャートを導き出すことができた。また、髄液MRIにて髄液蛋白濃度の同定が可能であることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
薬毒物中毒事例で得られる死後画像(CT・MRI)の特徴的所見について、すでに報告されている消化管以外の異常所見の有無について明らかにし、従来手法では判定不能であった神経系や循環器系への作用について明らかにすることにより、機能的死因に対する死後評価の可能性について明らかにしてゆく予定である。 死後MRIを用いた髄液検査について、不足する高蛋白事例ついて追加検査を実施し、解剖拒否事例(検体採取拒否事例)に対しても非侵襲的な薬毒物検査の確立を目指す。
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備考 |
死後画像読影ガイドライン2020年版(金原出版)(ISBN978-4-307-07114-7)を英訳。
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