研究課題/領域番号 |
19K08118
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
香田 渉 金沢大学, 医学系, 准教授 (30401920)
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研究分担者 |
小林 聡 金沢大学, 保健学系, 教授 (30313638)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | IVR / 癌 / 動注化学療法 / 凍結療法 / 微小環境 / ナノメディシン |
研究実績の概要 |
IVRとナノメディシンを組み合わせることにより、副作用を軽減しながら、相乗的に抗癌作用を増幅させる新たな低侵襲がん局所療法を開発することを最終的な目標としている。そのため本研究課題では、①IVRとナノメディシンの併用によりナノ粒子の組織送達率を増強されること、②送達された機能性ナノ粒子の作用によりがん微小環境のモデュレーションを効率的に行うこと、③これらの作用のがん組織のタイプによる違いについて明らかにすることを目的としている。 IVR治療として凍結療法および動注療法を用いることを予定しており、これらとナノメディシンの組み合わせによる治療効果を増強について検討していく。そのため、まずウサギでの凍結療法と動注療法の手技・手法の確立を行っている。凍結療法はこれまでに小動物用に開発した銅針と液体窒素を用いた簡易凍結療法により実施した。ウサギVX2肝腫瘍モデルで凍結療法の治療効果を病理学組織的に評価したが、ヘマトキシリン・エオジン染色では腫瘍細胞の多くに明らかな形態的変化は認められなかった。RFA療法後に形態学的変化の乏しいGhost cellが報告されており、同様のGhost cellを見ている可能性もあると考えられた。 動注療法について、ウサギでの経血管インターベンションは開創による血管アクセスが一般的であるが、手技が煩雑で侵襲も大きくなり、術後飲水しない個体がでるなど周術期に個体差が出てしまった。そこで経皮的にアクセス可能な耳動脈を使用して低侵襲な血管インターベンション法を確立した。またウサギでの選択的な肝動注療法では容易に血管攣縮を生じ、フリーフローが消失してしまった。この状態での動注は、ヒトに施行する動注療法とは異なる状態となってしまうため、ニトログリセリンの併用を行うなどしたが持続的な血管拡張作用がみられず、安定したフリーフローは得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IVR治療として凍結療法および動注療法を用いることにしたため、最初に凍結療法と動注療法の手技の確立とその効果の検証を行っている。安定した治療を行うための治療手技の確立に予想以上の時間を要しており、研究の進捗は当初予定からはやや遅れている。しかし、その過程でウサギにおけるより低侵襲な血管造影法を確立することができた。今後、安定した実験結果を得ることができるとともに、単一個体における反復動注による効果を検証する手法も確立できることが期待され、研究の幅を広げられる可能性を得た。IVR手技が確立できれば、その後の実験は速やかに進行させることが可能であり、また、安定した実験結果を得ることも可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
動物用簡易凍結療法における治療効果は、HE染色では診断困難なGhost cellと判別するため、凍結切片を用いてNADH染色により病理組織化学的に評価する。また、凍結療法後の肝臓と腫瘍の血流および血管透過性の変化について、ラット肝臓およびウサギVX2肝腫瘍モデルを用いて、光音響イメージングならびに血管造影、さらに組織標本を用いて評価する。これらにより変化がみられた場合、凍結療法後に投与するナノ粒子の組織送達率の増強や免疫性反応の増強への応用なども期待されると考えられる。 肝動注療法については、より細径のマイクロカテーテルの使用および血管拡張薬の変更や使用方法の改良などにより、ヒトと同様のフリーフローを保った選択的動注療法の確立を試みる予定である。安定したフリーフローの確保が難しい場合には選択的な動注療法を断念し、固有肝動脈レベルから使用可能な製剤での動注療法を行い、研究を進める予定である。 今年度に確立した経皮経耳動脈的血管インターベンションは同じ動脈を反復して使用できる可能性があるため、耳動脈を組織学的に評価して至適穿刺部位を検討する。反復使用が可能は手法が確立できれば、反復動注療法についても検討も行う予定である。 また、選択的動注によるがんターゲティングの増強効果を確認するため、腫瘍モデルを用いてICGの静注および動注を行い、腫瘍組織へのICG集積について経時的に検討する。さらに、血管作動性物質、EPR増強剤の動注によるがんターゲティングの増強効果を確認するため、ICGの静注および動注に先立ち血管作動性物質(ヒスタミン、VEGF、PAF等)やEPR増強剤(NO、S-ニトロソ化HAS Dimer等)を選択的に動注した上で、同様にICG集積について経時的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
安定した治療を行うためのIVR治療手技の確立に予想以上の時間を要し、研究の進捗は当初予定よりやや遅れた。そのため、当初予定していた実験をすべて実施することができず、次年度使用額が生じた。 しかし、IVR手技が確立できれば、その後の実験は速やかに進行させることが可能であり、今年度に実施できなかった実験ならびに次年度予定していた実験を順次実施することが可能である。
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