研究課題
<研究の背景>免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は様々な癌腫において標準治療となっているが、その有効性の予測や開始後早期の効果判定は難しい。今回の研究では、統合型PET/MRI装置を用いICI開始後の腫瘍内の環境を多角的に評価し、その有用性を予測することにある。<方法>ニボルマブ治療を行った非小細胞肺がん症例25症例に対し、治療前後にFDG-PET/MRIを実施し、FDG集積及びADC値の変化を評価した。それらのパラメーターと腫瘍奏効との関連を評価した。<結果>ニボルマブの病勢制御率は64%であった。非PD群(CR/PR/SD)では優位に治療後FDG集積(TLG; total lesion glycolysis)の低下、ADC値の増加が見られた。TLGの変化率とADCの変化率を足したΔTLG+ΔADCは優位に低下しており、ROC曲線でcut-off値を16.5に設定すると非PD群の正診率は92%であった。また、同様にΔTLG+ΔADC<16.5は無増悪生存期間(9.0 vs. 1.8 months, P < 0.00001)と全生存期間(23.6 vs. 4.7 months, P = 0.0001)にも関連していた。<結語>統合型PET/MRI装置を用いて、FDG集積の変化率とADC値の変化率を組み合わせることで、ICIの治療効果をより正確に予測できる可能性が示唆された。本内容はJ Immunother Cancer. 2020 Apr;8(1). pii: e000349.に掲載された。
2: おおむね順調に進展している
上記に示した研究実績は、当初予定していた第1段階の結果であり、FDG-PET/MRIでのICI後の変化を示すことができている。この内容は英文誌に掲載された(J Immunother Cancer. 2020 Apr;8(1). pii: e000349.)。現在、FLT-PET/MRIを用いた症例集積を終了し解析途中であり、次年度中の論文化を目指している。
細胞増殖のマーカーとなるFLT-PET画像およびMRI画像でのADC値に加え、空間加増脳に優れるSTIR画像を用いた解析を遂行中である。我々の研究でも、FLT集積は血液細胞の増殖能力を正確に評価可能であることが推測され(Eur Radiol. 2019 Jul;29(7):3908-3917.)、腫瘍の変化のみならず、造血器の変化をとらえることを目標に研究を進めている。これにより、腫瘍へ与える影響のみならず、宿主免疫に与える影響を評価し、より多角的に評価が可能になることが期待される。
引き続き、症例集積に伴うトレーサーの作成費用や免疫染色試薬の購入が必要であり、次年度へ繰り越し、使用する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
J Immunother Cancer
巻: 8 ページ: e000349
10.1136/jitc-2019-000349
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