研究課題/領域番号 |
19K08125
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
尾方 俊至 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90460576)
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研究分担者 |
山崎 秀哉 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50301263)
鈴木 弦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80279182)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 陽子線治療 / 肝臓がん / 強度変調放射線治療 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、肝細胞がん患者の症例におけるスキャニング照射法を用いた陽子線治療の線量分布について、その有用性と問題点を明らかにすることである。この知見に基づき、局所制御の向上と有害事象の低減を目指した陽子線治療の質向上に寄与する定量的データを提供する。特に肝臓がんにおいては、肝臓自体の放射線耐容線量が低く、患者背景として低肝機能(肝硬変等)を有する症例が多いことから、陽子線治療が大きな期待を集めている。さらに、先端医療技術である陽子線治療をより安全かつ効果的に活用することで、医療の質向上と医療費削減に貢献できるだけでなく、他の部位の症例における陽子線治療の選択判断基準の確立にも繋げることが期待される。2023年度の本研究の課題は、陽子線治療の費用対効果の評価を定量的に行い、陽子線治療がX線治療と比較して医療経済性評価の観点から優れているかを明らかにすることである。増分費用と増分効果の比較を行う増分費用効果比を用いて、費用対効果分析の実施を試みる。先行研究から生存期間、無増悪生存期間、治療費用、さらに肝機能障害などの有害事象やそれに伴う後治療の費用を算出し[Kawashima Mら、J Clin Oncol 2005、Bujold Aら、J Clin Oncol 2013]、完全な健康状態を1、死亡を0とした病態のQOLを効用値として表わし、それに生存期間を掛け合わせて質調整生存年の算出を図る。さらに、意思決定分析・決定木ソフトウエアであるTreeAge Proを用いて、健康状態を無増悪状態(副作用なし)、無増悪状態(副作用あり)、増悪状態、死亡の4つの状態に分類したマルコフモデルを構築し、シミュレーションによる解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
費用対効果分析のためのマルコフモデルのパラメータ設定に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究進捗状況は、当初の予定よりも遅れていると判断している。しかしながら研究の遂行過程は当初の計画通りであり、計画の変更は予定していない。今後も、研究分担者と密に連絡を取り、それらが滞り無く進むことで計画の遅れを取り戻すことを目指す。 2024年度は、陽子線治療とX線治療の費用対効果を定量的に比較評価し、医療経済性の観点から陽子線治療が優れているかどうかを明らかにすることを目的とした、マルコフモデルを用いた費用対効果分析を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響による学会オンライン開催の増加に伴い、旅費が大幅に削減され、次年度繰越額が生じた。この繰越額は、研究成果報告諸費用(英文校正、投稿料等)や謝金等に適切に使用される予定である。
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