研究課題/領域番号 |
19K08129
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大橋 俊夫 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (70327641)
|
研究分担者 |
深田 恭平 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00647266)
田中 智樹 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80594598)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 前立腺がん / 放射線治療 / 尿路 / 有害事象 |
研究実績の概要 |
前立腺癌の放射線治療において、線量増加による治療効果の上乗せが証明され、高線量時代になった。従来の放射線治療において直腸出血が最も懸念された有害事象であったが、ハイテク機器の普及により低減できるようになった。しかし、尿道線量は前立腺への線量増加ともに増加するため、尿路有害事象の増加が予想される。前立腺癌の放射線治療における尿路有害事象の予測モデルの構築を目指している。 ①外部照射では前立腺や直腸の位置は毎回の照射で微妙に異なっている。この毎回の微妙な変位が実際の患者が受ける線量にどのように影響し,それがどのように正常臓器の有害事象に結びつくかは,特に尿路系の臓器に関して明らかではない。この臓器の動きを追跡するために,過去の治療患者複数名に対して,治療時に撮像するCBCT (コーンビームCT)の画像を治療計画時に撮像したCTと重ね合わせ,すべてのCBCT上で前立腺の輪郭を描画した。治療時の前立腺の動きを解析した。②自験例では、前立腺がんに対する治療のうち低線量率組織内照射と外部照射併用の放射線治療の尿路有害事象が他のモダリティよりも高率だったため、併用療法における検討を実施した。組織内照射併用の外部照射における最適な画像誘導放射線治療として、シード線源の配置を乱さぬよう前立腺両外側の結合織内に線状金マーカーを留置した。その結果、骨照合よりも前立腺の位置照合精度は向上し、セットアップマージンも低減していることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
倫理委員会での承認が得られており、データの解析に必要なワークステーションの整備が完成した。低線量率組織内照射のデータをディープラーニングを用いて解析中である。また、組織内照射併用の外部照射における最適な画像誘導放射線治療に関して、位置照合精度の向上を示した論文を発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
照射ごとの前立腺の変位から膀胱,尿道,尿道球の相対的な変位を観察する。また,変位を考慮に入れて,実際に投与されたと考えられる線量を計算する。これを組織内照射の線量分布と組み合わせ,実際の尿路系の有害事象の報告と組み合わせることで有害事象予測モデルの構築を目指す。さらに,組織内照射用の小線源が挿入された前立腺を模擬したファントムを作成してフィルムなどで実測することで,小線源が存在する場合の外照射の線量分布の計算が既存の治療計画装置によって正しく計算できているか評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で,参加を予定していた複数の学会がオンライン開催となったため,旅費の使用がなかった。次年度に使用する。
|