研究実績の概要 |
本年度はマウスの正常組織(小腸)の放射線障害の評価方法を確立する目的で、エダラボン(3-methyl-1-phenyl-2-pyrazolin-5-one)による放射線防護効果を求めた。生後8週間のICRマウス雌(25-30 g)を使用し、照射30分前に0(生理食塩水),5,15,30,100 mg/kgを腹腔内投与した。マウスをケージ内で無麻酔、無固定で14Gyの160kV X線全身照射を行った。 エダラボン投与前と3.5日後の体重は、照射群ではエダラボン投与の有無に関わらず低下を認めた。一方、非照射群ではエダラボン投与の有無に関わらず体重に変化はなかった。観察期間内に排出された糞便の性状をスコア化して評価したところ、エダラボン投与により便の性状が保たれている傾向を認めた。 照射後3.5日にマウスを頸椎脱臼により安楽死させた後、小腸を摘出し組織学的変化を評価した。検体を固定後HE染色し、任意に10個の輪切り標本を抽出した。鏡検下に再生している生残腸陰窩数を測定し、その平均値を算出し、生残腸陰窩数とした。平均生残腸陰窩数は照射群でエダラボン投与なし、エダラボン濃度 15,30,100 mg/kgでそれぞれ4、41、35、71、66個であった。また、非照射群でエダラボン投与なし、エダラボン濃度 15,30,100 mg/kgでそれぞれ158、151、153、158、157個であった。エダラボン投与により有意に小腸の放射線障害が抑制されることが明らかになった。 マウス可殖腫瘍に対する効果判定法に関しては、新規にC3H/Heマウス可殖SCCVII腫瘍の供与を受け、in vitroでのコロニー形成条件の測定を行った。しかし、in vivoでの照射実験に到らず次年度の課題として残った。
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