悪性腫瘍の診断/治療薬として、L-type amino acid transporter 1 (LAT1)を標的とした薬剤開発研究が盛んである。これまでに側鎖にCu-ATSM構造を有する新規アミノ酸ATSMaaが、LAT1基質として細胞内に取り込まれる可能性を見出した。 本研究では、アミノ酸母核とATSM間距離が異なるATSMaa群を新規合成し種々の評価を行った。側鎖メチレン数1~4個を有するCu-Dap(BT)、Cu-Dab(BT)、 Cu-Orn(BT)、 Cu-Lys(BT)、およびLys(BT)のαアミノ基のメチル化体Cu-MeLys(BT)を合成、これらのMCF7細胞への取り込みや排泄を検討し、LAT1に対する標的能を比較・評価した。また、ATSMaa群のうち有望なATSMaaについて、Cu-67標識体を用いてモデル動物における体内動態を確認した。以上より、LAT1を標的とする新規悪性腫瘍診断/治療薬としての有用性を評価した。 MCF7細胞に対し、Na+非依存的に経時的な細胞内取り込みを示し、取り込み量はCu-Lys(BT)≧Cu-Orn(BT)>Cu-Dab(BT)>Cu-Dap(BT)>>Cu-MeLys(BT)、Cu-Dab(BT)およびCu-Dap(BT)ではNa+依存的な取り込みも確認された。Cu-Lys(BT)とCu-Orn(BT)は、LAT1基質/阻害剤共存下で、取り込みが大きく阻害された。また、この2種は、LAT1を介したMCF7細胞からの排泄を示したが、その他の排泄機構も関与する可能性を認めた。モデル動物において、Cu-67標識Lys(BT)は、腫瘍に対して投与1時間で3.21、48時間後で2.22%dose/gと長時間にわたる集積を示した。総合的に、LAT1標的薬剤としてCu-67標識Lys(BT)が最も有望な性質を示すことが明かとなった。
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