研究課題
血管内皮細胞のホウ素中性子捕捉反応線量に対する感受性を調べることが出来れば放射線(X線)の抗腫瘍効果に寄与する血管損傷の解明と云う本研究課題にとっては大変有益だが、その探索は直ちには困難である。そこで、代表的な再生上皮系である小腸の粘膜上皮のホウ素中性子捕捉反応線量に対する感受性をBPA+中性子ビームと中性子ビーム単独の効果とを比較することによって調べた。評価法は再生腺窩数から生残細胞数を求めるマイクロ・コロニーアッセイである。何れの処置においても生残細胞数は中性子フルエンスに対し指数関数で減少した。これよりD0は約0.6Gyとなった。腺窩部の幹細胞と考えられる細胞の核・細胞質比からOnoの式でもって推定したところ、D0は0.5~0.7Gyとなり妥当な推定値と見なされた。Onoの式は腫瘍細胞のみならず、正常細胞にも応用可能と考えられたので、血管内皮細胞の核・細胞質比を調べると、0.216となり、この値からホウ素中性子線量に対するD0は先のOnoの式によって1.524Gyと推定された。今後の抗腫瘍効果における血管内皮細胞の損傷の寄与の研究に重要な情報と考える。
2: おおむね順調に進展している
「概ね」としたのは、原子炉中性子を研究に使う必要があり、コロナ肺炎の影響で、冬の中性子照射実験が出来なかったための若干の遅れの故である。X線照射の方は基本的に影響は出ないので、次年度に取り返せると考えている。
京都大学原子炉の運転再開に合わせて、複数種の腫瘍にBNCTを施行し、殺細胞効果をコロニー・アッセイと腫瘍の増殖遅延時間で解析する。亦、並行してX線による実験も行い、等しい細胞生存率でのBNCT群とX線照射群の増殖遅延の差を調べ、腫瘍の血管損傷が抗腫瘍効果に及ぼす影響を明らかにする。
コロナ肺炎の影響で原子炉実験の1月~2月期が実施できず、動物の購入費が残った。2020年度に研究を実施、資金を使う計画である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
Applied Radiation and Isotopes
巻: 161 ページ: 109159~109159
10.1016/j.apradiso.2020.109159
巻: 163 ページ: -
https://doi.org/10.1016/j.apradiso.2020.109212
https://doi.org/10.1016/j.apradiso.2020.109202