研究課題/領域番号 |
19K08134
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
小野 公二 大阪医科薬科大学, 医学部, その他 (90122407)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | BNCT / BPA / 腫瘍治癒率 / 造腫瘍性細胞率 / 腫瘍血管損傷の寄与 |
研究実績の概要 |
BNCTにおける抗腫瘍効果に占める直接の殺細胞効果を、BPAとSCCVII腫瘍を用いて行った実験データの再解析で検討した。データはコロニー法で評価したSCCVII腫瘍細胞の中性子感受性、及び細胞分裂後の小核非出現率で調べたSCCVII腫瘍細胞の反応である。BNCT後の分裂細胞における小核非出現率と中性子フルエンスの関係は二相性であった。低反応第Ⅱ相細胞分画の割合は約40%であり、第Ⅱ相分画の小核非出現率曲線の傾きを高反応第Ⅰ相細胞分画の其れと比較すると、47.7%であった。ln(小核非出現率)=-α(中性子フルエンス:E+11)で表すと、第Ⅱ相細胞分画の其れは0.031であり、低反応第Ⅱ相分画が最終的な治癒に影響すると考えた。次に腫瘍治癒実験のデータを解析した。中性子フルエンスと腫瘍治癒率のデータから、ln(BNCT後の腫瘍治癒率)=-(造腫瘍性生存細胞数)の関係式を用いて、BNCT後の造腫瘍性生存細胞数と中性子フルエンスの関係を求め得る。この解析データから、ln(造腫瘍性細胞数)の曲線の傾きは0.035となり、先の低反応第Ⅱ相細胞分画の其れと略等しい値になったが、僅かに大きかった。この差は生体での造腫瘍性と培養実験でのコロニー形成能の違いとして合理的に理解できる。この傾きの比、0.035/0.031=1.129を最初のデータでのコロニー形成率曲線の傾きに乗じて生体内での造腫瘍性曲線の傾きを補正すると、0.1548となった。この値と0.035を用いて生体内での造腫瘍性細胞の減少曲線の全体を推定した。BNCT前の生体内での造腫瘍性細胞数を推定すると、9E+4個となった。この値は、腫瘍径から推定のBNCT前の細胞数のx0.00167である。腫瘍移植の際の経験からもこの値は合理的な推定値である。亦、BNCTの効果が腫瘍細胞への直接効果で説明できることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍にあって中性子を使ったマウス実験が思いの様にできなかったことが最大の理由である。亦、研究に思ったような時間を割くことが出来なかったこと、人員の不足も理由の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
過去の実験のデータ蓄積を利用して再解析を進めること、及び、不足する情報をこれに合理的に追加して研究を進める予定でいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で実験動物に対する中性子照射実験への機会が大幅に制限され、他の業務の繁忙さも相まって実験研究が進まなかったため、22年度は過去のデータも生かす方向で可能な実験研究を行い、目的とする放射線照射を受けた固形腫瘍の治癒に及ぼす腫瘍血管損傷の寄与を明らかにする。その為、研究費は実験動物、標本作成、細胞培養に必要な一連の器具、薬品などの使用する予定である。
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