研究代表者・中松は任意の形状の高線量域と低線量域をつくり出すことが可能となる強度変調放射線治療の臨床的応用を行っている。本研究では特に悪性脳神経膠腫に着目し、腫瘍体積への1回線量増加を目的とした新たなSIB-IMRT法の開発を行っている。本研究費を活用し放射線脳壊死に対する新たな治療戦略の開発を目的とした前向き臨床試験を実施しており、現在その結果をまとめ論文作成中である。 研究期間中、中松は脳腫瘍に対する臨床的基礎研究として若年者に多くみられる胚細胞腫瘍の放射線治療後の脳壊死を調査した。その結果脳壊死は無く安全に行われていることを確認し、成果を2019年日本放射線腫瘍学会にて発表を行った。 研究分担者の土井は、8 週齢雄性C57BL/6J マウスを使用し、再照射後の正常組織における生体反応の初回照射時との違いを明らかにすることを目的とした研究成果を論文にて発表した。また、土井は放射線性脳壊死および悪性脳神経膠芽腫に対する最新の情報を収集するため、2019年 ASTRO (American Society for Radiation Oncology)に参加しポスターでの発表を行った。 研究分担者の藤田らは、現在転移性脳腫瘍、特に非小細胞肺癌からの脳転移症例について手術標本を用いた研究結果を論文投稿準備中である。また、脳壊死組織内で集積亢進しているM2マクロファージではB7-H3、B7-H5といった免疫抑制分子の発現が亢進していることを示した。同様 にグリオーマ放射線脳壊死マウスモデルにおいても同分子の発現亢進が見られ、これらが浮腫の原因となることを示した。
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