研究課題/領域番号 |
19K08137
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
季 斌 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, 主任研究員(任常) (80392223)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | CSF1R / 神経炎症イメージング / PET / ミクログリア / 11C-GW2580 |
研究実績の概要 |
R1年度において、以下の検討を行った 1. in vitro結合特性の評価: 新規CSF1RトレーサーGW2580と既存トレーサーCPPCの前駆体を作成し、さらに11C標識体の合成に成功した。得られた11C-GW2580と11C-CPPCを用いて、ミクログリア株化細胞Ra2への結合特性を評価した。その結果、11C-GW2580と11C-CPPC は類似した結合特性で、Ra2細胞のホモジネートに結合したことが明らかになった(IC50: 11C-GW2580 vs 11C-CPPC=2.5nM vs 3.3nM; Non-specific binding: 11C-GW2580 vs 11C-CPPC=50% vs 40%)。 2. 神経炎症モデルにおける11C-GW2580の生体イメージング: カニイン酸片側線条体注入モデル(急性モデル)及びアルツハイマー病モデル(APP-knockin)(慢性モデル)において11C-GW2580の生体イメージングを行ったところ、11C-GW2580は反対側に比べ、カニイン酸注入側線条体(モデル作製2週間後)に明らかに集積した。また。高齢APP-knockin(KI)マウス(17-20月齢)において、アミロイド病理が顕著な前頭葉及び海馬部に顕著な放射能集積が認められた。アミロイド病理が軽微な小脳部を参照領域にしたDVR値は同月齢のNon- KIマウスに比べ、有意に増加した(Non-KI vs KI = 0.96±0.03 vs 1.04±0.05)。また、死後脳を用いた免疫染色から以上の急性/慢性神経炎症モデルの脳内CSF1Rは主にミクログリアに発現していることを確認した。以上のことから、11C-GW2580は急性または慢性神経炎症においてミクログリアに発現するCSF1R発現を生きた個体でとらえることができると考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
R2年度まで計画した既存トレーサーCPPC前駆体の合成と標識合成は成功し、in vitro結合実験を終えたことは当初の計画以上に進めた。さらに複数の抗CSF1R市販抗体を検証したところ、特異性の優れた抗体の獲得にたどり着いたことも計画以上に進展したことを示している。
|
今後の研究の推進方策 |
R2-R3年度において、カニイン酸片側線条体注入モデル(急性モデル)及びアルツハイマー病モデル(APP-knockin)(慢性モデル)において11C-GW2580と11C-CPPCの生体イメージングを同一動物個体で行い、両トレーサーのhead-to-head比較研究を行う。また、認知症患者を用いる探索的臨床研究を念頭に置いて、その準備研究として霊長類を用いて、両トレーサーの特性評価を行い、臨床研究に適するトレーサーの選出に基礎実験データを提供する。
|