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2020 年度 実施状況報告書

ミクログリアおよびその活動を画像化するPETトレーサーの開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K08139
研究機関国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

研究代表者

加藤 孝一  国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第七部, 室長 (50382198)

研究分担者 熊本 卓哉  広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (50292678)
原田 龍一  東北大学, 医学系研究科, 助教 (60735455)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードPET / ミエリン / ミクログリア / アミロイドβ / クリック
研究実績の概要

令和二年度はCOVID-19による緊急事態宣言の影響を受け、化合物の合成を進められず。新しいClick化合物が得られなかった。それに伴い新規化合物のin vitroにおける評価も出来なかった。一方、前年度には実施できなかった髄鞘ホモジネートに対する結合評価試験について、髄鞘化トレーサーであるMeDASを用いた確認実験を行うことが出来た。その結果、論文と類似の結果を得られたとともに、本評価法の問題点も明らかになった。すなわち、本評価法は、リガンド溶液をショ糖の濃度勾配により調整した髄鞘含有ホモジネートのサンプルと処理した後、そこから遊離したリガンドをUVで定量すること手法であるが、結合リガンドと比較して遊離リガンドの量が多いことが明らかとなった。結合量を評価するデータとしては信頼性が低く、直接結合しているリガンド量から結合を評価する手法の方が適切であると考えられた。
P2X7Rについては標識前駆体となるデメチルピログルタミン酸アミドの合成まで進んだが、メチル体の合成には至っておらず、in vitroの評価はまだ行っていない。一方、これまでピログルタミン酸アミド化合物に対して行ってきたPETの結果から、一連のピログルタミン酸アミド誘導体が弱いP-糖たんぱく質基質である可能性があった。てんかん等でP-糖タンパク質が過剰発現している場合、その評価に弱い基質をPETトレーサーとして用いることが適していると考えられており、近年PETトレーサーの開発が盛んに行われている。特に、ピログルタミン酸アミドの中でP2X7Rへの親和性を示さない化合物に関しては、P-糖タンパク質に特異的なPETトレーサーとなり得るため、新規トレーサーとして興味深い。今後はP-糖タンパク質基質としての評価も行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

令和二年度は髄鞘化トレーサーの開発に対するアッセイ法に目途を立てられたものの、化合物の合成が進んでおらず、新規化合物に対するin vitro、およびPETを用いたin vivoでの評価をすることが出来なかった。
令和三年度は、Click2をリード化合物とした髄鞘特異的なトレーサーの開発、Click1をリード化合物としたアミロイドβトレーサーの開発、ピログルタミン酸フェネチルアミド誘導体の構造変換によるP2X7Rトレーサーの開発、およびピログルタミン酸ベンジルアミド誘導体によるP-糖たんぱく質トレーサーの開発と分子デザインに関する研究の方向性は決まっている。またこれまでの研究から、化合物の合成、および評価方法ともに大きな問題はない。今後、分担者との連携をしっかりと図り、研究に遅れを取り戻したいと考えている。
このように本研究計画は当初の予定より遅れていると考えられる。

今後の研究の推進方策

令和三年度は引き続きClick2をリード化合物として、芳香環上の置換基の構造修飾を行い、髄鞘を特異的に画像化するトレーサーを探索する。また、Click1の構造を基にした新規アミロイドβトレーサーの開発として、11C-メチル標識を念頭に、二か所のアミノ基のメチル基の置換数によるアミロイドβへの結合親和性の影響を調べる。さらに、メチル以外のアルキル置換基の影響を調べ、得られた最適構造化合物は、さらに18F標識を考慮しフルオロアルキル型にする。
髄鞘への結合の評価は、RI計測によりホモジネートに対する実際の結合量を調べることにしり。PiBは髄鞘に結合することが知られており、トリチウム標識体が市販されている。そこで[3H]PiBをRI計測する放射性リガンドに用い、髄鞘含有ホモジネートへの[3H]PiBの結合に対する阻害試験により、Click化合物の結合親和性を評価することにする。
ピログルタミン酸アミドはメチル化体を合成し、マウス脳ホモジネートを用いたP2X7Rへの結合阻害により受容体に対する結合親和性を調べる。またP-糖タンパクの基質あるいは阻害剤であることを調べること簡易キットが市販されている。本キットを用いて、ピログルタミン酸アミド類とP-糖たんぱく質との相互作用を評価する。

次年度使用額が生じた理由

今年度は合成が進まなかった影響で、in vitroでの評価、およびその後の実験である標識合成、PETの撮像等、放射性化合物を扱う実験を実施できなかった。その結果、標識合成に関連する試薬を購入する機会が生じなかった。
次年度は髄鞘化トレーサーの候補化合物の評価を行う目的で3H-PiBを使用する。3H-PiBはトリチウム標識化合物で高額であるため、本試薬を購入するのに必要な経費として分担者(原田)に割り当てた。また、P-糖たんぱく質の評価キットを購入するのに必要な経費を分担者(熊本)に割り当てた。その他、PET合成関連試薬を含めた放射性化合物の取り扱いに関する消耗品の使用が増えることが予想され、関連する試薬、消耗品の購入費用として使用する。
合成および標識合成に必要となる試薬、ガラス器具、標識前駆体の合成に必要な試薬、ガラス器具等の購入にかかる経費を消耗品費として使用する。PET撮像研究に必要な実験動物、ならびに実験動物を作成するのに必要な薬品、細胞実験に必要な生化学試薬等に係る経費を消耗品費として使用する。研究成果の報告として国内の学会発表等への参加にかかる経費を国内旅費として使用する。分担研究者との打ち合わせ等に係る経費を国内旅費として使用する。学会の参加登録費、ならびに論文投稿の英文公正と必要に応じて論文投稿費等に係る経費をその他として使用する。

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公開日: 2021-12-27  

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