研究課題
放射線治療の分割照射中に癌細胞集団の一部が放射線抵抗性を獲得し、再発や遠隔転移を引き起こすことが近年、問題視されている。現在、放射線抵抗細胞に有効な薬剤や治療戦略は未だ確立されておらず、放射線治療の予後改善のためには放射線抵抗性細胞の殺傷法の開発は喫緊の課題である。ヒアルロン酸 (HA)合成阻害剤として知られている4-methylumbelliferone (4-MU)は、様々な癌細胞で抗腫瘍/転移効果を示すことが報告されている。本研究は長期的な放射線分割照射により放射線抵抗性を獲得した口腔扁平上皮癌細胞株を使用し、4-MUの放射線増感剤としての効果を検討するため行われた。放射線抵抗性を獲得した口腔扁平上皮癌細胞株を使用し、4-MUの放射線増感剤としての可能性を検討した。その結果、4-MU投与によって細胞生存率や細胞遊走が抑制され、抗腫瘍効果は増強された一方で、放射線増感効果は誘導されなかった。また、4-MU投与によって癌幹細胞様表現型が抑制され、酸化ストレスが増強された。4-MUの作用機序としてHA合成阻害効果に着目して検討したところ、細胞外HAの除去による細胞生存率の抑制や、放射線増感効果の誘導は見られなかった。さらに、HA合成酵素 (HAS)の中で、放射線抵抗性細胞で有意な高発現が観察されたHAS3を標的として、siRNAによるノックダウンを行ったところ、細胞生存率の抑制と放射線増感効果の増強が観察された。HA受容体の一つであり、癌幹細胞マーカーとして知られているCD44の発現もHAS3ノックダウンによって抑制されており、癌幹細胞様表現型の抑制や酸化ストレスの増強が示された。これら結果から、HAS3が放射線抵抗性に寄与する重要因子であり、HAS3の直接的阻害あるいはHAS3が合成するHAの阻害を介して放射線増感効果が増強されている可能性が示唆された。
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Cells
巻: 11 ページ: 3780
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Radiation Environment and Medicine
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