研究課題/領域番号 |
19K08144
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
星合 壮大 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50740362)
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研究分担者 |
入江 敏之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40302418)
森 健作 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80361343)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / TACE |
研究実績の概要 |
肝動脈化学塞栓療法(TACE)は肝細胞癌の確立された治療法であるが、巨大あるいは多発肝細胞癌など選択的治療が難しい症例での治療成績は必ずしも良好とはいえない。我々はシスプラチン溶液と破砕ゼラチン粒をバルーン閉塞下に交互に繰り返し動脈内に注入する肝動脈化学塞栓療法であるRAIB- TACEを開発した。リピオドールを使用しないので、リピオドールと抗癌剤の懸濁液が中枢側の血管に留まらず、比較的速やかに抹消の血管に抗癌剤が移行するため、抗癌剤による血管炎、胆管炎のリスクを従来法より減少することができると考えている。したがって、選択的治療が難しく治療範囲が広範囲になる症例に対しても比較的安全に治療できると思われる。 2019年度は当院および連携機関で43例のRAIB-TACEを施行した。 従来のTACEでは制御が難しいと考えられている腫瘍径(cm)と腫瘍数の和が7以上になるUp-to 7基準外の症例に対してもRAIB-TACEを施行しており、現時点で、このうち12 例については治療効果判定が終了している。RAIB-TACEの成績は部分奏効(partial response)11例(92%)、安定(stable disease)1例(8%)、進行(progressive disease)0例であった。完全奏効(complete response)を得られた症例はなかった。肝機能は血中アルブミン値、ビリルビン値から算出するALBIスコアで評価を行った。治療前ALBI score=-2.46、治療後3ヶ月で-2.41であり、肝機能の有意な悪化はみられなかった。これらの成績は当院で過去に施行した従来のリピオドールを使用するTACEと比較して良好な結果であった。 今度はさらなる症例の蓄積が望まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例の登録および解析ともに概ね順調である。今後はさらに症例を増加し、検討を増やす予定である。
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今後の研究の推進方策 |
肝細胞癌に対する治療戦略は近年の分子標的薬の登場により変貌の途中にある。例えば、バルセロナ肝癌病期分類の中期にあたる肝細胞癌の進行度のうち、腫瘍径(cm)と腫瘍数の和が7以上になるUp-to 7基準外の症例に対しては、一般に肝動脈化学塞栓療法TACEによる治療成績が不良であることから、分子標的薬療法を施行すべきとの提案が一般的となっている。これは従来のTACEでは治療効果が不十分であるばかりでなく肝機能も低下させることが要因である。 我々が開発した新しいTACEであるRAIB-TACEは従来のTACEと比較して、これまでのところUp-to 7基準外の症例についても治療効果は良好で、肝機能の有意な低下も引き起こしていない。例えば副作用などで分子標的療法が継続できない患者などに対して、RAIB-TACEを施行することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
症例のデータを蓄積するデータベースであるACRESSシステムにアクセスするためのパーソナルコンピュータが予定より安価で購入できたため。次年度には研究協力施設を増やして前向き試験を実施する予定のため、パーソナルコンピュータを追加購入する費用にあてる。
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