研究課題/領域番号 |
19K08145
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
宮崎 将也 群馬大学, 大学院医学系研究科, 特任准教授 (00546731)
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研究分担者 |
中島 崇仁 群馬大学, 医学部附属病院, 准教授 (70375559)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 凍結療法 / 光分子イメージング / インターベンショナルラジオロジー(IVR) / 癌治療 / 蛍光 |
研究実績の概要 |
経皮的凍結療法は針先端に低温治療域を作成し腫瘍細胞を破壊するインターベンショナルラジオロジー治療である。凍結療法の再発因子には凍結・融解時間、凍結・融解繰り返し回数、各腫瘍細胞における致死温度などが関与していると考えられ、各癌腫における凍結療法の最適な治療プロトコールは確立していない。本研究ではルシフェラーゼ遺伝子導入された癌腫細胞を用いて光分子イメージングによる定量的評価を行い、凍結療法における最適な治療プロトコールを開発することを目的としている。 2019年度は細胞を用いた研究を主に行った。まず、細胞バンクより、腎細胞癌、肺癌(非小細胞癌、小細胞癌)、大腸癌、前立腺癌のルシフェラーゼ遺伝子導入癌腫を入手した。癌腫細胞を35mm 培養プレートに播種し複数のプレートを作成した。蛍光撮像装置 (Xenogen IVIS)を用いた光分子イメージングによる定量評価を行い、それぞれのプレートの発光量が同等となるように調整した。続いて比較的良好に作成された腎細胞癌と肺癌の細胞プレートを用いて凍結温度および凍結・融解回数の変化に関する実験を行った。各細胞プレートを-25℃と-80℃に設定した冷凍庫で凍結10分・解凍5分を1サイクルとして2サイクルと3サイクルの疑似凍結療法を行った。各疑似治療サイクル後に光分子イメージングを行った。 結果は、いずれの癌腫細胞でも-80℃および治療サイクル3回の方が-25℃および治療サイクル2回よりも有意に光分子イメージングの発光量が低かった。-25℃の条件下では腎細胞癌の方が肺癌よりも発光量が低かった。 この結果から、より低温(-80℃)で凍結・融解回数が多い(3回)方が凍結療法の有効性が高いことが示唆されたが、腎細胞癌では-25℃でも肺癌よりも細胞死が得られていたことから、癌腫によって最適な治療温度が異なることも同時に示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画当初は2019年度中にすべての癌腫において凍結温度、凍結・融解サイクルに関する細胞実験を終了する予定であったが、実際には腎細胞癌と肺癌についてのみの実験となった。これは、実験で使用する細胞プレートの光分子イメージングにおける発光量を可能な限り同等にする必要があるが、その調整が困難で調整が可能であった癌腫から実験を行ったためである。また、計画当初は凍結温度を-20℃、-40℃、-60℃、-80℃と細かく設定する予定であったが、最適な冷凍庫がなかったため、-25℃、-80℃のみでの実験となった点も計画と異なっている。
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今後の研究の推進方策 |
実験に使用する癌腫の細胞プレートの発光量も安定的に作成可能となってきたため、2020年度は研究スピードを加速することができると考えられる。また、-45℃~-60℃まで温度を設定可能な冷凍庫も導入できたため、2020年度は各温度での実験が追加可能と考えられる。2020年度後半では、ルシフェラーゼが導入された各癌腫を移植した担癌マウスを作成し、これに対して様々な条件の疑似凍結療法を実施し光分子イメージングによって腫瘍の活動性を評価すると同時に各マウスの生存期間も観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加などの旅費を計上していたが、新型コロナウィルス蔓延により当該学会が延期またはweb開催となったため旅費の使用がなくなり次年度使用額が生じた。 次年度も旅費の支出は少なくなることが予測されるが、研究実施に必要なルシフェラーゼ発現細胞、マウス、簡易凍結器を購入する予定である。
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