研究課題/領域番号 |
19K08147
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
宮地 利明 金沢大学, 保健学系, 教授 (80324086)
|
研究分担者 |
間瀬 光人 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (60238920)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 磁気共鳴画像 / 脳 / グリンファティックシステム / 頭蓋内環境 / 脳脊髄液 |
研究実績の概要 |
本研究では,アミロイドβタンパク質やタウタンパク質など,脳の神経活動に伴って生じる老廃物が脳脊髄液循環系によって排泄される機能(グリンファティックシステム)を人間において解明して臨床利用するために,磁気共鳴イメージング(MRI)装置を使用して画像解析する手法「グリンファティックMRI」を開発・確立することを目的としている.令和2年度は,グリンファティックMRI手法の中で実用性が高かった脳内水分子揺動量の解析手法に関して引き続き研究を実施した. 最初に,水分子揺動が心周期の脳内水分子拡散変化にどの程度関与するかを実証するために,速度及び加速度補正する拡散強調パルスシーケンスを作成して検討した.その結果,心周期において見かけの拡散係数(ADC)が変化するのは,脳実質及び血管の拍動そのもののbulk motion(直接作用)よりも,これら拍動が駆動力(外力)となって脳内水分子を揺り動かすこと(間接作用)が原因であることが判明した. 次に,睡眠時にマウスにおいてグリンファティックシステムの活性度が上昇する報告があるが,これが人体においても同様かを正確に検証するために,海馬,前頭葉,側頭葉,後頭葉白質の脳内水分子揺動量を周波数解析する準備を整えた. 臨床例の検討に関しては,特発性正常圧水頭症(iNPH)における心周期ADC変化波形を周波数解析し,iNPHは広い周波数に渡ってADCの振幅が大きくなることを実証した.またiNPHのtap test及びVP-shuntにおける脳内水分子揺動量解析を一部実施し,inPHのtap test後及びVP-shunt後において脳内水分子揺動量が有意に増加することが明らかになった.さらに髄膜腫症例の評価を開始した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の交付申請時に提出した研究課題「グリンファティックMRI手法の中心的位置付けにある脳内水分子揺動の機序を解明するために,心周期の見かけの拡散係数(ADC)変化因子を特定すると同時に,心周期ADC変化波形の周波数解析を実施しながら臨床例の評価を開始する」について一定の成果を出したため. 実際に,脳内水分子揺動が心周期ADC変化の主因であること,臨床例の検討において特発性正常圧水頭症(iNPH)は広い周波数に渡ってADCの振幅が大きくなること,iNPHのtap test及びVP-shuntにおいて脳内水分子揺動量が有意に増加することなどの成果を出している. また次年度に向けて,人体における睡眠時脳内水分子揺動解析の準備を整えることができたこともその理由としてあげられる.
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は,グリンファティックMRIにおいて中心的位置付けにある脳内水分子揺動の機序解明と臨床応用のために,脳内水分子揺動が脳の領域によってどの程度異なるかを明らかにする.また脳内水分子揺動の速度成分を解析すると同時に,撮像加算回数などの撮像条件が解析値に及ぼす影響を周波数解析によって検証する.臨床例の評価については,特発性正常圧水頭症のpossible iNPHに分類される症例のtap testと脳内水分子揺動の関係を検討する.また髄膜腫症例において脳内水分子揺動を評価する.さらに人体において睡眠時脳内水分子揺動解析を脳の領域ごとに実施して,睡眠時のグリンファティックシステム活性度との関連を調べる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初,令和2年11月にシカゴ(米国)で開催予定の国際学術集会(RSNA)と令和3年3月にウィーン(オーストリア)で開催予定の国際学術集会(ECR)において成果発表するつもりでいたが,新型コロナウィルス感染拡大のために両国際学術集会ともWeb開催になったために未使用額が生じた. 令和3年度の使用計画として,未使用額と令和3年度の配分額を合算した90万円を,令和3年度に開催の上記両学術集会における成果発表に充てる予定である.
|