研究課題
局所温熱療法(HT)は放射線治療や化学療法との併用で強い増感効果を引き起こす。私たちは、これまでに、HTと免疫チェックポイント阻害剤である抗CTLA-4抗体(C4)との併用による、局所及び遠隔巣腫瘍への効果(アブスコパル効果)並びに腫瘍内免疫微小環境の変化をマウス乳癌モデル (4T1細胞)及びマウス膵管癌モデルを用いて研究してきた。いずれも腫瘍細胞を両足に移植し、片側腫瘍のみを42.5度、20分の加温を実施した。HT単独治療またはC4単独治療では抗腫瘍効果が得られなかった一方で、併用治療により、強力な局所及びアブスコパル効果が得られた。さらに、マウスからCD4陽性T細胞を除去することで、局所効果、アブスコパル効果共に消失し、HTとC4の併用の治療効果がヘルパーT細胞介在性であることが示唆された。また、既存の有効な治療法が存在しない膵管癌においても、HT単独及びHTとC4の併用によっても効果が全く得られない一方で、高線量放射線照射(16Gy)とC4との併用により、著明なアブスコパル効果が惹起された。腫瘍中の免疫細胞の解析により、細胞傷害性T細胞の誘導、制御性T細胞の誘導抑制が起きていることを明らかにした。膵癌はリスク臓器が隣接しているため、臨床上、線量増加が困難であることから、HTを加え、放射線の線量を減少させて同様の効果が得られるか検討した。その結果、42.5℃30分のHTと放射線14GyとC4の併用により、局所及びアブスコパル効果が得られた。炭素線はブラッグピークにより、優れた線量集中性を有する放射線であり、膵管癌のようなリスク臓器が近接している臓器に有利である。私たちは膵管癌に対し、炭素線とC4の併用で著明な局所及びアブスコパル効果が得られることを明らかにした。複合的物理療法と免疫チェックポイント阻害剤の併用は、新たながん治療戦略になりえることが示唆された。
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