研究課題/領域番号 |
19K08163
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
橋本 和幸 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (80414530)
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研究分担者 |
塚田 和明 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主席 (30343916)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | RI製造 / 加速器 / 中性子 / がん治療 / 量子ビーム / 分離化学 |
研究実績の概要 |
本課題では、がん治療に有用な47Sc(半減期80時間)の新規製造法として、加速器で得られる高速中性子(加速器中性子)をチタン(Ti) に照射して生成する47Scの生成量評価を行うと共に、Tiからの47Sc分離精製技術の確立を目的とする。 47Scの合成は、主に東北大学サイクロトロンを利用し、ベリリウムの重陽子照射(40 MeV)で得られた加速器中性子を天然Ti金属に照射して行った。その結果、目的の47Scをはじめ(47Ti(n,p)47Sc)、Tiと高速中性子の核反応生成物である44mSc(半減期59時間), 46Sc(84日), 48Sc(44時間), 47Ca(4.5日)等の生成を確認すると共に、生成量を求めた。 次に、本照射済みTi金属ターゲットを用いて、ScとTiの分離挙動を検討した。Ti金属試料は、昨年度の検討結果から、濃塩酸のみでは溶解しなかったが、少量のフッ化水素酸を加えて湯浴中で軽く加温することにより、完全に溶解することを確認した。また、本高速中性子反応では、ガンマ線測定に適した放射性Tiは生成しないため、Tiの定量は、過酸化水素を用いたTiの発色反応を利用し、波長400 nmの吸光度を測定して行った。Ti/Scの分離手法の検討は、キレート樹脂固相抽出剤の一種であるDGAレジンのカートリッジカラムを用いて行った。TiはDGAレジンにほとんど吸着されず、溶解液及び6 M硝酸にて溶出した。その後、放射性Scは0.1 M塩酸によって溶出し、その回収率は、98%以上であった。以上の結果、DGAレジンカラムを用いた分離法により、照射済みターゲットのTiから目的の放射性Scを良好に分離できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の影響による実験制限等があったが、実験の重点化、関係施設のご配慮等により、最低限の照射実験(東北大学サイクロトロン加速器、原子力機構タンデム加速器)を実施することができ、47Sc生成量評価及びSc/Tiの基本的分離手法の確立等、おおむね当初の計画通り進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果を基にして、本課題を以下のようにまとめる。 「47Scの生成量評価」では、高濃縮47Ti試料を用いて、重陽子エネルギーを変化させて照射することにより加速器中性子のエネルギーを変えた照射実験をさらに継続し、47Sc生成量及び副生成物の生成量を解析し、47Scの放射性核種純度を最大にするための最適な重陽子エネルギーに関する評価を進める。 「分離精製手法の開発」では、Tiのもう一つの化学種である酸化物の溶解条件の精査を進めるとともに、照射済み金属Tiターゲットを用いて、副生成RIを完全に分離するための最適条件を決定する。さらに、得られた47Scを用いてSc-DOTA等標識化合物の合成条件の最適化を進め、47Sc溶液の品質評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、実験、成果報告会、学会発表、研究打ち合わせ等が、中止・制限あるいはオンライン開催となったため、旅費の執行減が生じると共に、感染予防のための実験制限等もあり、消耗品等の使用減も生じた。今後は、47Sc品質評価のために有用な化合物の新たな検討等、本課題のさらなる有用な成果を得るための予算執行を図る。
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