研究実績の概要 |
本課題では、がん治療に有用な47Scの新規製造法として、加速器で得られる高速中性子(加速器中性子)をチタン(Ti) に照射して製造する手法の確立を目的とする。 47Scの製造は、重陽子をベリリウムに照射して得られる加速器中性子をTi金属に照射して行った。加速器中性子による47Sc及び副生成物(48Sc:半減期44時間, 46Sc:半減期84日)の生成量は、中性子のエネルギーに大きく依存するため、中性子のエネルギー分布に影響を与える重陽子の入射エネルギー依存性(15~40 MeV)を調べた。その結果、半減期が長い46Scの影響を極力少なくし、47Scの放射性核種純度を高めるためには、20 MeV以下の重陽子照射が有効であることがわかった。 次に、照射済みTi金属から生成した47Scを分離する手法として、キレート樹脂固相抽出剤の一種であるDGAレジンのカートリッジカラムを用いて検討した結果、TiはDGAレジンにほとんど吸着されず、溶解液及び6 M硝酸にて溶出した。一方、吸着した47Scは0.1 M塩酸によって溶出し、その回収率は、98%以上であり、DGAレジンカラムを用いた分離法により、照射済みTiターゲットから目的の47Scを良好に分離できることを明らかにした。最終年度は、得られた47Scの品質確認を行うため、生理活性物質とScの両者に親和性を持つ二官能性配位子として有用なDOTAをモデル配位子として使用し、Sc-DOTA標識条件の検討を行った。その結果、反応温度・時間、DOTA濃度、pH等の標識条件を最適後、99%以上の標識率でSc-DOTAが得られることを明らかにし、本手法により、高純度の47Scが得られたことを確認した。 以上の結果、47Scの新規製造法として、加速器中性子をTiに照射して生成する手法を確立すると共に、高純度47Scの基本的分離精製技術を確立した。
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