研究課題/領域番号 |
19K08168
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
齋藤 正敏 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40241583)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | dual-energy CT / stopping power ratio |
研究実績の概要 |
粒子線を利用するがん治療は、光子線(X線)治療よりもがん病巣部に集中して放射線を照射できる治療法として期待されている。しかし、従来のCT画像(シングルエネルギーCTで撮影)に基づく『CT値-阻止能比変換』の不確かさのため、特に高い精度を必要とするリスク臓器近傍の線量計算に支障をきたしていた。本研究の目的は、粒子線がん治療計画における線量計算の高精度化を可能とするデュアルエネルギーを用いた新しい『CT値-阻止能比変換』の開発である。本目的達成のため研究期間内に、臨床用デュアルエネルギーCT装置を用いた撮影を通して本手法の阻止能比(粒子の体内飛程)の計算精度を調べるとともに、本手法に最適な撮影条件や画像ノイズ低減アルゴリズムを検証する。本年度の研究計画は、臨床用デュアルエネルギー CT装置を用いてファントムの撮影を様々な条件で実施し、『デュアルエネルギーCT値-阻止能比変換』の計算精度を調べ、本手法の基本原理の妥当性を実証することである。研究計画に基づき、阻止能比イメージングのための『デュアルエネルギーCT値-阻止能比変換』を臨床用dual-source CT装置(Somatom FORCE, Siemens)を使って管電圧条件90-150 kV/Snで行った。CT撮影する被写体としては2種類、電子密度校正用ファントム(Gammex RMI 467, Gammex)および人体ファントム(PBU-10, Kyoto Kagaku)を用いた。解析の結果、Gammexファントムのすべてのロッドにおいて、SPRの計算値と参照値の間に良好な一致が見られ、二乗平均平方根誤差は1%未満であった。 しかしながら、得られたSPR画像のノイズレベルを調べた結果、高エネルギーあるいは低エネルギーのシングルエネルギーCT画像のノイズに対して2倍以上に増加することが分かり、何らかのノイズ低減処理が必要であることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた“電子密度や組成が既知の被写体の阻止能比校正を通した「デュアルエネルギーCT値」から「阻止能比」への変換精度”と“各種撮影条件変化が阻止能比変換精度に与える影響の検証”の2点を実施し、本新規手法の基本性能と撮影条件変化の影響についてある程度検証できている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果を踏まえて、本手法の実用化を見据えた下記項目について研究を遂行する。 ①本手法に適した画像ノイズ低減アルゴリズムの検証 様々なノイズ低減アルゴリズムによる画像処理の結果が、阻止能比や粒子線の体内飛程計算に与える影響を定量的に検証する。 ②撮影条件の最適化 より低い被曝で正確な阻止能比計算を実行可能とするデュアルエネルギーCT装置の撮影条件(管電圧,管電流,付加フィルタなど)を最適化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
○理由:研究成果公表のための論文投稿に関わる費用の請求が遅れているため。 ○使用計画:当該費用の請求があり次第、使用する予定である。
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