粒子線を利用するがん治療は、X線治療よりもがん病巣部に集中して放射線を照射できる治療法として期待されている。しかし、従来のシングルエネルギーCT画像に基づく『CT値-阻止能比変換』の不確かさのため、特に高い精度を必要とするリスク臓器近傍の線量計算に支障をきたしていた。本研究の目的は、粒子線がん治療計画における線量計算の高精度化を可能とするデュアルエネルギーを用いた新しい『CT値-阻止能比変換』の開発である。本目的達成のため研究期間内に、臨床用デュアルエネルギーCT装置を用いた撮影を通して本手法の阻止能比(粒子の体内飛程)の計算精度を調べるとともに、本手法に最適な撮影条件や画像ノイズ低減アルゴリズムを検証した。研究初年度、臨床用デュアルエネルギー CT装置を用いてファントムの撮影を実施し、『デュアルエネルギーCT値-阻止能比変換』の計算精度を調べ、本手法の基本原理の妥当性を実証した。しかしながら、得られた阻止能比画像のノイズレベルを調べた結果、高エネルギーあるいは低エネルギーのシングルエネルギーCT画像のノイズに対して2倍以上に増加することが分かり、何らかのノイズ低減処理が必要であることが分かった。次年度以降、『デュアルエネルギーCT値-阻止能比変換』に適した画像ノイズ低減アルゴリズムを検証した。研究計画に基づき、阻止能比イメージングのための『デュアルエネルギーCT値-阻止能比変換』を臨床用CT装置を使って管電圧条件90-150 kV/Snで行った。得られた阻止能比画像に対して、エッジ保存ノイズ低減アルゴリズムを適用した。解析の結果、Gammexファントムおよび人体ファントム(頭部及び腰部)において、被写体内の微細構造の描写能を損なうことなく、画像ノイズを1/3以下にまで低減可能であることが確かめられた。
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