研究課題/領域番号 |
19K08172
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
齋藤 茂芳 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (40583068)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 7T-MRI / 化学交換飽和イメージング法 |
研究実績の概要 |
CESTイメージングは生体内の内因性の代謝物と生体内の水との化学交換を利用するため,造影剤を必要とせずに,代謝物を高い分解能で画像化することが可能である.その一方でCESTのイメージングは,化学交換に関わる撮影パラメータや測定対象が置かれる磁場強度,温度,pHに影響を受けるため,撮像法の標準化やその解析手法には課題があり,ファントムやサンプル,病態モデルを利用した撮影技術の確立は必要不可欠である. 本研究の目的は,7T-MRIを用いて乳酸を対象とした100μm以下の高分解能の化学交換飽和イメージング法(Chemical exchange saturation transfer :CEST)を確立することである.本手法を脳腫瘍,脳梗塞,ミトコンドリア症などの病態モデルへ適用を行う.生体内の内因性の乳酸をCESTイメージングにより画像化することで,乳酸代謝異常や乳酸脳内蓄積を呈する多くの病態において,発生機序の解明,その進行や治療効果を観察できると考える.具体的に以下の3点を検討する.1) 濃度やpHを変化させた乳酸サンプルをCESTで画像化すること,2) 生体においてのCESTの至適撮影条件の検討,3) 脳腫瘍,ミトコンドリア症モデル,新生仔期低酸素脳症モデルなどに適用し,脳内の乳酸代謝異常や乳酸脳内蓄積を画像科学の観点から評価する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① 乳酸サンプルのCESTによる評価:乳酸濃度に依存したCEST効果の上昇,またpHの変化にともなってCEST効果が変化し,CEST効果が濃度依存性やpH感受性を持つことを確認した.② 乳酸CESTの正常マウスの頭部撮影:分解能は低いが正常マウスの頭部において,乳酸のオフセット周波数0.5ppmでのCEST画像を取得することに成功した.③ 病態モデルへの作成と準備:脳腫瘍ラットを作成し,T2強調画像で変化が確認された腫瘍内のMRSを測定し,乳酸信号の亢進を確認した.また,ミトコンドリア症マウス(Ndufs4ノックアウト)において同様にMRSを用いて継時的な乳酸信号の亢進を確認した.ミトコンドリア症モデルのMRI撮影およびCESTイメージングの解析を検討し,脳内の乳酸の蓄積の画像化が可能となった.おおむね予定通り順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
・ミトコンドリア脳症モデル:Leigh脳症はミトコンドリア病の一種であり,患者からは髄液中の乳酸やピルビン酸の濃度が高いこと,MRIおよびMRSを用いた画像検査では脳内の乳酸のピークが観察される.Leigh脳症モデルとしてNdufs4ノックアウトマウスを使用する.病態モデルへのCESTの適用と各種撮像法の応用 各種病態モデルへのCESTイメージングの適用を行い,上記3種類のモデルの継時的な病態変化,乳酸値の変化をCESTイメージングにより評価する.また,MRSや拡散MRIなども用いて,従来法との比較検討も行う.
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